Vol.03 ポスト大震災。いま、自分たちにできること

歯科を取り巻く今後の課題

鑑別システムの確立

宮城県で開業する曽矢猛美先生は、今回の震災で矯正歯科医としてというより、一人の歯科医として、非常時に何ができるのかを見つめ直したと話します。

「やはり、歯科医である自分にできるのは口腔ケアです。今回の大震災では、津波で亡くなったご遺体の収容が大規模なために、身元が判明しないまま火葬しなくてはなりませんでした。
そんな中、私は自分にできることとして宮城県歯科医師会からの派遣で行方不明者の検視をしたり、石巻日赤病院で口腔ケアを行ったりしました」

その中で必要だと感じたのは、歯を通じた個人識別システムの構築でした。

ポスト大震災
他地区の歯科医師会や大学などから、
宮城県歯科医師会に届いた支援物資の一部。
「目視で判別できない場合、指紋検査、歯科情報検査、DNA検査が行われますが、ご遺体の状態によっては指紋の採取が難しくなります。かといって、DNA検査は照合装置が少なければ時間も費用もかかってしまう。
一番安価で確実なのは、歯科情報です。自治体ごとに歯科検診のデータをデジタル化して、どこかのサーバにあげて備蓄しておき、なにかのときに照合できるシステムを構築する必要があると強く感じました」

今回は、沿岸部にある歯科医院が津波で被災し、生前の歯科カルテが大量に失われてしまったため、歯の照合も思うように進まなかったと言われています。災害時における歯科情報は、家族と本人を結ぶ大切な最後の絆。この大震災を契機に、歯による個人識別システムを確立することが、津波で人生を突然たたれてしまった方々への最大の供養ではないかと、曽矢先生は語ります。

ポスト大震災
宮城県多賀城市七ヶ浜にある、
津波に襲われた幼稚園に支援に行ったときの写真。
背景は、がれきの山。その前に幼稚園があった。
「園児が亡くならなかったことにほっとし、
『こんにちは』『ありがとう』の声に、かえって励まされました」(曽矢先生)
「緊急時の対応はスピードが命。速やかに行わなければ意味がありません。
その点、矯正歯科医会の有志が被災地に何がほしいかを聞き、必要とされるものを用意して、パッケージにして送った『口腔ケア応援セット』はよかったと思います。
そのとき現地が求めるものを、相手に負担をかけない形でサポートするのがボランティアの精神ですから」

必要な手を必要なところにさしのべるには、相手の状況を正しく知ることが大前提。その上で、専門の異なる歯科医や医師が連携して、患者さんのケアにあたることも重要です。人と人、分野と分野の壁を取り外し、専門性を生かしながら、いかに関わるかを考えること。本当に求められる支援の形は、そこから生まれるのかもしれません。

次のページでは、会という枠組みを度外視して実施されている矯正歯科医会の治療費補助の取り組みをご紹介します。

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