拡大床による矯正歯科治療のトラブル事例②|Vol.18 拡大床を使った矯正歯科治療の危険とトラブル:トレンドウォッチ:本会の活動・ニュース|質の高い矯正治療と安心の提供に努める矯正歯科専門の開業医団体「日本臨床矯正歯科医会」

拡大床による矯正歯科治療のトラブル事例②


■必要な装置は、治療前の検査・診断を経て決まる

Case2 5年以上拡大床を使い続けた末に
結局抜歯をしたB美ちゃん(13歳)の場合

B美ちゃんは、歯を抜かずに歯並びを整えるため、一般歯科のもとで6歳から約5年間、拡大床を使用した治療を受けました。その中で、あごをより効率よく広げるために、発育に合わせて拡大床を4回作り直したといいます。

その後、13歳で上あごの右側犬歯(前から3番目の歯)が本来生えるはずの場所ではなく、中切歯(前から2番目の歯)の歯肉側から生えてきてしまった(犬歯の異所萌出)ため、これまでの非抜歯治療から一転、主治医から犬歯の抜歯を提案されてしまいます。
それを不安に感じたご家族がB美ちゃんを連れて矯正歯科を受診しました。

拡大床をつける前

4つも拡大床を作り替えたことから、真面目に治療を受けていたと思われるB美ちゃん。にもかかわらず、矯正歯科に来たときには口もとは出たままでした。パノラマX線写真を撮って見ると、犬歯は切歯(1番目の歯)の横にありました。
●矯正歯科専門歯科医院を受診した際のパノラマX線写真
矯正歯科専門歯科医院を受診した際のパノラマエックス線写真
犬歯は咬み合わせを安定させる要となる歯だけに、異所萌出を放置すると、見た目によくないだけでなく、臼歯(奥歯)の咬み合わせに負担がかかり、歯列を乱す原因となります。
そればかりか、隣接する歯を傷め、寿命を短くしてしまうことにもつながってしまうのです。
そこで矯正歯科では、犬歯の異所萌出により今後起こりうるリスクを本人とご家族に説明し、同意を得たうえで、犬歯を本来の位置に移動することはあきらめ、歯根のダメージを受けている上あごの左右両方の側切歯(前から2番目の歯)と、下あごの左右両側の第二小臼歯(前から5番目の歯)を抜歯し、マルチブラケットを用いて再治療を開始しました。
1年半が経過した今、矯正歯科治療は順調に進行しています。
●現在の歯並び
現在の歯並び
★犬歯の異所萌出については、トレンドウォッチvol.10をご覧ください。

Case3 治療ゴールがないまま拡大床を使用し
反対咬合になったC雄くんの場合

C雄くんは、永久歯が生えるスペースを確保するため、9歳のときから5年間、一般歯科のもとで上下のあごに拡大床をつけました。その結果、上下とも、ほぼデコボコのない状態で永久歯が生えました。

しかし、拡大床の使用中に反対咬合になってしまったのです。口の中の写真を見ると、大臼歯が咬み合っていないのがわかります。そのことに疑問を抱き、14歳のとき、自ら矯正歯科を訪ねたのでした。

●拡大床使用中(12歳8か月)の歯列状態
拡大床使用中(12歳8か月)の歯列状態
拡大床使用中(12歳8か月)の歯列状態

このようにずれてしまった臼歯は、拡大床の使用だけでは改善できません。また、C雄くんは下あごの成長とともに右方へのズレも認められ、正面からみて顔が非対称になってしまっています。これは治療のゴールを明確に定めないまま、安易に拡大床を使ったことによるトラブルです。
●矯正歯科を訪ねたとき
矯正歯科を訪ねたとき
矯正歯科では、骨格的な歪みと下あごの突出は矯正歯科治療のみでは治せないと判断し、本人と相談のうえ、「顎変形症」として成長終了後にあごの外科手術を併用する矯正歯科治療を行うこととしました。なお、現在は拡大床の使用を中止し、今後のあごの成長を継続している状態です。
こうした事例からいえるのは、拡大床を使用すべきかどうかは、検査・診断を経て判断されるべきだということ。そして、拡大床だけで治療を終えるのではなく、マルチブラケットを用いて咬み合わせを整えることが重要だということです。
★次のページでは、安心して治療を受けるために知っておきたい
 6つの基本をご紹介!