2016年4月12日

市民セミナー -2015~2017年

市民セミナー開催予定 名古屋市 相模原市 横浜市 成田市

日本臨床矯正歯科医会は、2003年度からの事業である市民セミナーを、今年度も開催いたします。 市民セミナーとは、矯正歯科治療の正しい知識の啓発・普及活動の一環として2003年度より全国各地にて開催している市民セミナーです。各地の市民セミナーの開催概要に関しましては、下記をご参照下さい。

日本臨床矯正歯科医会主催・2015~2017 市民セミナー

開催都道府県 開 催 日 会 場 プログラムと参加申込み方法
神奈川県横浜市 2015年7月23日(木) 区民文化センターサンハート 参考プログラム
ご報告
愛知県名古屋市 2015年2月8日(日) 中電ホール 参考プログラム
ご報告
神奈川県相模原市 2016年6月26日(日) ユニコムプラザ さがみはら 参考プログラム
ご報告
千葉県成田市 2017年1月22日(日) 成田市文化芸術センター 参考プログラム
ご報告

2016年4月 8日

矯正歯科治療について:目次

>> 1.矯正歯科治療はなぜ必要?
>> 2.歯が動くって本当?~歯が動くメカニズム
>> 3.不正咬合の種類と治療法
>> 4.治療のすすめ方
>> 5.矯正歯科治療を受けるには
>> 6.抜歯・非抜歯について

1.矯正歯科治療はなぜ必要?

歯並びと咬み合わせ

咬み合わせと歯並び咬み合わせと歯並び

 あなたは、奥歯を咬みしめたとき、前歯も横の歯もしっかり咬んでいますか?ファスナーも歯車も、歯がしっかり咬み合って、はじめて持ち前の機能を発揮します。同じように歯は、歯並びのきれいさだけではなく、すべての歯がきちんと咬み合い、あごの動きによく合って、食べ物を噛めなければなりません。一見きれいな歯並びでも、上下の歯がきちんと咬み合っているとは限りません。
 大切なのは、咬み合わせ!「歯並びをよくして、もっときれいになりたい」と、矯正歯科医を訪れる人はたくさんいますが、「咬み合わせをよくしたい」という人は、まだ少数派です。しかし、「きれいな歯並び」とは"よく噛める、正しい咬み合わせ"であることを知ってください。

8020と咬み合わせ

「8020運動」ってご存知ですか?
 「8020運動」とは厚生労働省と日本歯科医師会により推進されている、健康で豊かな生活を送るために欠かせない歯を80歳で20本以上残すことを目標にした運動です。
 20本以上の歯があるとおせんべいやフランスパン、お肉やごぼうなど、たいていのものを噛むことができます。また80歳で20本以上の歯を持つ人は、なんでも好きなものを不自由なく食べることができるので、外で友人と食事をすることもいといません。
 その結果、歯の数が少ない人に比べて社交的であったり、おしゃれであったり、常に機嫌がいいなどの傾向がみられるとの調査もあります。
 歯並びや咬み合わせに不具合があると、食べ物を前歯で咬み切り、奥歯ですりつぶすという歯の大切な機能を十分に果たすことができません。
 さらに、80歳で20本以上の歯が残っている人達を調べてみると、前歯や奥歯がしっかりと咬み合い安定していました。特に8020達成者には、受け口(反対咬合))はいなかったという報告もあります。(出典:日本歯科医師会雑誌 1999;52 茂木悦子ら)
このことから、歯並びや咬み合わせは全身の健康状態と強く関連していると考えられます。つまり、いつまでも健康で元気に生活するためには、咬み合わせは無視できない要因なのです。

矯正歯科治療のメリットとリスク

メリットⅠ
 矯正歯科の目的は、歯並び、咬み合わせの改善にあります。さらに良好な咬合の維持することで患者さんのQOL(Quality Of Life)の向上を目指します。

① 歯科疾患の予防
② あご骨の成長発育障害の予防
③ そしゃく機能の改善と維持
④ 口唇閉鎖不全の改善
⑤ 発音の改善
⑥ 顎関節と咬合との調和
⑦ 体のバランスや運動能力の改善
⑧ 一般歯科治療を行うために必要な歯の移動が可能になる

メリットⅡ
 矯正歯科治療をすると、性格がポジティブに向かう傾向があるとされています。 ともすると、わたしたち矯正歯科医は、歯並びや咬み合わせの改善、さらには副次的なその予防に目を向けますが、矯正歯科を受診する患者さんの多くは外見の改善に大きな価値をおいています。わたしたち矯正歯科医は、患者さんが健康で美しい外見を求めることを後押ししています。

リスク
 矯正歯科治療を始め、継続していくことによって生じるリスクについて、良質な治療を行う矯正歯科医師であれば、患者さんへ必ず事前に説明を行っています。またこれらのリスクが歯の健康に支障をきたさないレベルに留めるような治療を進めていきます。
 もし、矯正歯科医師がこれらのリスクを事前に説明しないで治療をする場合は、逆に注意が必要と言えます。

① う蝕、歯肉炎、歯周炎
 長期的な矯正装置の装着によって、歯の磨き残しから生まれるリスクです。

② 治療期間の延長
 1.成長予測の困難性
 顎骨の成長予測は難しく、成長発育の量や方向およじ時期を常に考慮し治療を行う必要があります。この判断を誤ったり、予想外の成長発育が起こった場合、治療期間が長くなることがあります。

 2.不適切なメカニクス
 歯の移動を行う際、選択される矯正装置の力が適切なものでなければなりません。計画どおりに歯の移動をコントロールできず、結果として治療期間が長くなり、歯に負担(う蝕、歯根吸収)をかけてしまうケースがあります。

 3.患者の協力不足
 定期的な来院、口腔ケア、矯正装置の使用等において患者さんの協力が得られない 場合、治療の中断や延長を余議なくされる場合があります。

③ 歯根吸収の発現
 ある程度の歯根吸収は発現しますが、適正な矯正力による歯根吸収は修復され、最小限に留めることができます。また歯根吸収を引き起こすような矯正力をかけることはできるだけ避けるようにします。

④ 歯肉退縮
 矯正歯科治療に伴い、歯肉の退縮や付着歯肉の喪失を生じることはあります。このような現象は、歯を支えるための歯槽骨がなく、角化した付着歯肉がほとんどない場合に特に頻繁に認められます。歯肉退縮を認める歯については、治療を開始する前に付着歯肉を増大して歯肉を上げるなどの処置を考慮します。

2.歯が動くって本当?~歯が動くメカニズム

歯が動くって本当? 歯とその周囲の歯槽骨(しそうこつ)との間には、繊維に富んだ歯根膜(しこんまく)という組織があります。動かしたい歯に矯正装置で適度な力を加え、この歯根膜を圧迫すると、そこに骨を吸収する細胞が現れます。反対側の引っ張られる歯根膜には、骨を作るもとになる細胞ができます。そうして歯はゆっくりと動きだすのです。これは歯が、骨の中を通って自然に生えてくるときに起こっている変化と同じメカニズムです。 矯正治療は、矯正技術で加える力の大きさや方向を十分に考慮し、歯を無理なく自然の場所へ動かすのです。

矯正歯科治療の限界

 このように歯は歯槽骨の中で移動することができます。
 このことは一方で、矯正歯科治療で歯を動かしていく際の限界を表しているのです。

① 骨格的な不正に対する歯の移動の限界
② 歯の移動による顔貌変化の限界
③ オーバージェット(上下顎の前歯の距離の値が大きいもの)
④ 上下顎の正中線の一致
⑤ 過去の抜歯や先天欠如による歯の隙間(空隙閉鎖)

 歯槽骨をはみ出してた歯は長持ちしません。したがって不正咬合の原因が骨格的な不調和によるものであれば、歯の移動のみで理想的な咬合関係を獲得することが困難な場合があります。


3.不正咬合の種類と治療法

上顎前突(出っ歯)の治療法

上顎前突(出っ歯)の治療法
 成長期のお子さんで、骨の大きさに問題がある場合は上顎骨の過剰発育を抑えたり下顎骨の成長を促進したりします。これは成長の早い時期(8才~10才)に行うのが望ましいです。
 さらに奥歯に原因がある場合は、適切な矯正装置で上下の奥歯も動かし、正しい咬み合わせにします。必要に応じて、成長期間中上下の顎の成長の管理をします。
 次に前歯を移動させて引っ込めたり、その他のすべての永久歯に器具をつけて最終的な咬み合わせを獲得します。
 歯が動いていく隙間をつくるため、抜歯をすることもあります。
特に顎の大きさに問題がある場合には、口腔外科医の協力で骨の手術を併用することもあります。

下顎前突(反対咬合・受け口)の治療法

下顎前突(反対咬合・受け口)の治療法
 適切な矯正装置で上下の前歯を動かし、正しい咬み合わせにします。これは成長の早い時期(6~8才)に開始するのが望ましいです。
 同時に、成長期にお子さんで、骨の大きさに問題がある場合は下顎骨の過剰発育を抑えたり、上顎骨の成長を促進したりします。
 必要に応じて、成長期間中上下の顎の成長の管理をします。
 成長の終了後に、すべての永久歯に器具をつけて最終的な咬み合わせを獲得します。
 特に顎の大きさに問題がある場合には、口腔外科医の協力で骨の手術を併用することもあります。

叢生(八重歯など)の治療法

叢生(八重歯など)の治療法
 成長期のお子さんで、骨格に問題がある場合は、成長期間中上下の顎の成長の管理をします。歯だけが問題の場合は、永久歯がすべて揃うまで、しばらく観察を続けます。
 しかし、がたがたのために上下の歯がうまく咬み合わない場合には、部分的に悪いところのみを早期に治療する場合もあります。永久歯がすべて揃った段階で、すべての永久歯に器具をつけて最終的な咬み合わせを獲得します。歯が動いていく隙間をつくるため、抜歯をすることもあります。

開咬の治療法

開咬の治療法
 成長期のお子さんで、骨の大きさに問題がある場合は、成長期間中上下の顎の成長の管理をします。指しゃぶりや舌のくせがある場合には、適切な矯正装置を用いるか、舌やお口の周りの筋肉のトレーニングを行ってそれらの影響をなくし、正しい咬み合わせにします。これは成長の早い時期(6才~8才)に開始するのが望ましいです。
 鼻・のどに慢性的な病気があり、いつも口で呼吸をしている場合も顎の発育に問題がでることがありますので、耳鼻科の先生の診察も必要になることがあります。
 成長期間中、必要に応じて、上下の顎の成長の管理をします。
成長の終了後に、すべての永久歯に器具をつけて最終的な咬み合わせを獲得します。
 歯が動いていく隙間をつくるため、抜歯をすることもあります。
特に顎の大きさに問題がある場合には、口腔外科医の協力で骨の手術を併用することもあります。

過蓋咬合の治療法

過蓋咬合の治療法
 成長期のお子さんで、骨の大きさに問題がある場合は、成長期間中上下の顎の成長の管理をします。これは成長の早い時期(8才~10才)に開始するのが望ましいです。
 一般的に引っ込み過ぎた上の前歯を先に治します。
 成長期間中、必要に応じて、上下の顎の成長の管理をします。
成長の終了後に、すべての永久歯に器具をつけて最終的な咬み合わせを獲得します。
 歯が動いていく隙間をつくるため、抜歯をすることもあります。
 特に顎の大きさに問題がある場合には、口腔外科医の協力で骨の手術を併用することもあります。

矯正装置

 矯正装置には、たくさんの種類があります。一般には、歯の表面に金属やレジン、セラミックの小さなブラケットをつけ、それに細いワイヤーを通して歯を動かす固定式の装置を使います。プラスチック製の取りはずし式装置を使う方法や、フェイシャルマスク、ヘッドギアなど口の外で使う装置もあります。

固定式矯正装置

固定式矯正装置固定式矯正装置
固定式矯正装置固定式矯正装置
固定式矯正装置固定式矯正装置

取りはずし式矯正装置

取りはずし式矯正装置取りはずし式矯正装置
取りはずし式矯正装置取りはずし式矯正装置取りはずし式矯正装置

4.治療のすすめ方

治療のすすめ方

①検査・診断の重要性

 矯正歯科治療を行うためには、臨床検査として①口腔内検査 ②顎機能と咬合機能の検査 ③顎のプロポーション検査 ④筋機能の検査などを行います。セファログラム(頭部X線規格写真)の撮影は矯正歯科の検査で特徴的で、診断のグローバル・スタンダードです。特に子どもの患者さんでは顎顔面の成長バランスや成長方向、量の予測をするために不可欠な検査です。
 また、診断資料の分析として①模型分析 ②頭部X線規格写真の分析 などを実施した上で診断、治療方針・治療計画を決定します。
 治療計画については、わかりやすい治療のゴールやそのプロセスを患者さんに示しながら、それぞれの患者さんに適した治療装置とその効果,治療期間、第2期治療の可能性(子どもの場合)、保定、後戻りの可能性や治療のメリット・デメリットおよび抜歯・非抜歯について説明を行います。

②治療開始時期

子どもの矯正歯科治療

 子どもの歯(乳歯)から大人の歯(永久歯)の生え変わりはある程度時期が決まっています。親知らず以外の永久歯が全て生えそろうのは中学生くらいです。
 歯並びや咬み合わせは、全ての永久歯がしっかり並んで、それぞれの歯がしっかり噛み合ってこそ健康的に長持ちするのです。したがって、早く治療を開始してもその子どもさんの成長が止まって咬み合わせが安定していることを確認するまでは矯正歯科治療や管理が続くことになります。
 子どもの矯正歯科治療を始めるにあたっての大原則は、治療期間や本人の負担をなるべく軽減するために「後からでも改善できることはあまり早くから介入しないこと」です。
早期に矯正治療を着手しないといけない症例は問題は、そのまま放置しておくと今後起こる成長に悪い影響を与えると判断されるものだけです。
 それ以外の場合は早期に着手しても、後々歯の生え変わりや成長とともにまた問題が再発することもがあります。最も効果の出やすい最適な開始時期まで待ちましょう。
 ただし症状や患者さんの骨格パターンによっては、早く治療を開始したほうがいい場合も少なからずあります。
 歯並びやかみ合わせが気になったら受診は早めに、治療開始時期は矯正歯科医に見極めてもらうことをお勧めいたします。

☆子どもで始めた場合
【メリット】

○これから起こる成長を利用しやすい。
○虫歯や修復歯、欠損歯が少ないので、矯正歯科治療を行う上での選択肢に幅がある。
○歯の移動に伴う歯肉の退縮や骨の減少が起こりにくい。

【デメリット】
○保護者の方の意見が優先されがちで、患者さん本人が消極的な場合は、治療の協力(歯みがきも含めて)が得られにくい。
○成長に伴う環境の変化、また患者さん自身にも変化が見られるので、治療に対するモチベーションを維持するために、特に注意を払う必要がある。

大人の矯正歯科治療

 矯正歯科治療は子どもの時にするものだから、大人になったらもうできないと思って諦めかけている人も案外多いようです。
 大人の患者さんには歯周病のリスクを抱えている、子供に比べて歯の動きが遅い、歯に詰め物やかぶせ物をしている箇所が多い、骨の成長を期待できない、...などの特徴を持っている方がほとんどです。その一方で、歯の矯正歯科治療中にいろんな装置を使うこと、丁寧に歯磨きを行うこと、きちんと来院することなどについて患者さんの協力が得られやすいというメリットもあります。

☆大人で始めた場合
【メリット】

○本人の意志で治療を開始するので、その後の治療においても協力が得られやすい。
○治療に対しての関心や理解力が高い。
○すぐに本格的な治療が開始できる。

【デメリット】
○虫歯や修復歯、欠損歯が多い。
○歯周病に罹患している場合が多く、治療に対して注意が必要である。
○歯の移動に伴い歯肉の退縮や骨の減少が起こる可能性がある。

③保定までが矯正歯科治療

 矯正歯科治療の本当の目的は、患者さんが80歳になっても20本以上の歯が残っているように、歯と歯並びを長持ちさせることにあります。
 そのために、歯がきれいに並んで理想的なかみ合わせになったら、ある程度の期間、歯をとめて、なるべく長く維持させる必要があります。
これを保定といいます。
 保定に使う装置は取り外しができるものや表から見えにくいものなどがほとんどで、歯を動かす治療のときに使う装置に比べるとかなり負担が減ります。また、来院も4~6か月に1回程度になります。

5.矯正歯科治療を受けるには

①良質な矯正歯科治療とは

・機能と審美性の両方をバランスよく向上することが大切
 矯正歯科治療は、歯並びと咬み合わせの改善を目的に治療を行います。それは顎や顔を構成する骨格が調和のとれている状態で、口腔機能の改善と向上を伴うことを前提としています。その結果として、審美的な歯並びや口元、顔貌になることが良質な矯正歯科治療に求められるものです。

・治療において患者さんへの説明と同意、説明責任が果たされているか 
 とはいえ歯並び、咬み合せや口元、顔のバランスは、受診年齢や症状の程度により、治療結果には限界があります。したがって、矯正歯科治療の質は、単に診療技術の高さだけではなく、治療前に治療方針、予想治療期間や治療費、また治療の限界などを十分に患者さんやご家族に説明を行い、同意の上で治療を開始し、また治療中も進行状況や問題点を丁寧に行うといった、説明と同意、また説明責任を十分に果たされているか否かも、矯正歯科治療の質を定義する際に大切なことです。

②矯正歯科治療の専門性について

 大学卒業後に歯科医師免許を持つ全員が「矯正歯科治療」ができるわけではありません。
歯科医師が矯正歯科治療を行う場合、歯科大学矯正歯科に在籍し、あらためて専門的な教育と研修を行う必要性があります。この専門的な教育と研修の必要性は一般歯科分野と大きく異なるため、矯正歯科は専門性が高いといわれています。

・認定医・専門医について
 日本には歯科医師が約10万人いますが、その中で様々な形で矯正歯科治療を行っている歯科医は約3万人います(厚生労働省資料より)。しかしながら全国の歯科大学の矯正歯科講座あるいは医局で何らかの専門教育と研修を受けた歯科医師が中心に所属している日本矯正歯科学会の会員は約6000名です。その中でも3~5年間の教育と研修を終了し、専門知識と診療技術の資格試験をパスして認定された日本矯正歯科学会認定医は約2500名です。
 そしてさらに認定医の中でも高いレベルの資格認定を受けた約300名の日本矯正歯科学会専門医がいます。矯正歯科医の受けた教育また研修の面からは、上記の日本矯正歯科学会認定医(全国に約2500名)が専門知識や診療技術の面から、適切で信頼できる矯正歯科医と考えることができるでしょう。
  
・歯科の標榜について
 歯科医師であれば診療所の標榜科目として、その専門分野の教育や研修の経歴、治療経験の有無に関係なく歯科、小児歯科、口腔外科、矯正歯科の4つの診療科目を標榜することができます。したがって歯科医院の標榜科目だけでは、矯正歯科治療を行う歯科医師の専門的教育や研修の経歴を判断することはできません。

・安心できる医療態勢について
 前項でもふれたように、矯正歯科治療を行う上では検査や診断が欠かせません。したがって診療所にはそれらに必要な機器や設備が整っていることが良質な矯正歯科治療を提供するためには不可欠です。
 また常勤の矯正歯科医やスタッフがいることも矯正歯科治療を受ける診療所選びの際にはぜひ推奨される条件です。

 常勤の矯正歯科医がいると
 ・矯正装置が取れてしまったなど器具に不具合があっても、すぐに対応できる
 ・同じ担当医による一貫治療が行える
 などのメリットがあります。

 また豊富な経験や専門知識がある歯科衛生士やスタッフがいると
 ・矯正歯科医の指導監督のもとに、患者さんへのさまざまな対応が可能となる
 ・矯正装置への口腔衛生指導が行える
 ・治療中の食事指導が行える
 などのメリットがあります。

③転医システムについて

 矯正歯科治療は経過が長いので、その間に進学や転勤による遠隔地への転居などで治療を始めた診療所への通院が困難になることがあります。その際に治療を引き継いでくれる転医先の紹介や診断資料や治療経過を含む転医資料の作成、また治療の進行状況に応じての治療費の清算と返金が行われるシステムを有していることも、患者さんが安心して受診できる良質な矯正歯科治療の大きな要因です。本会には治療中に転居等で診療所を変わらざるを得なくなった患者さんに、転居先にできるだけ近い矯正歯科を紹介する「転医システム」があります。

6.抜歯・非抜歯について

①なぜ抜歯しなくてはならないか

 そもそも歯並びが悪い原因を考えると大きな原因の1つとして、歯の大きさと歯が並ぶ容れ物である歯槽骨の大きさのアンバランスが挙げられます。
 歯列が著しく狭い場合、幅を広げることはしますが歯槽骨の大きさは固有のものなので広げるにも限界があります。特に下顎の犬歯を広げて並べることはすべきではなく、上顎歯列の幅も下顎の歯列に調和されるべきだと言われています。
 歯槽骨の大きさを無視して歯を並べるために歯列を広げると、将来的に歯肉が下がりやすい、歯周病が進行しやすい、また歯並び自体が元の形に戻り安定しないなどといったことも起きる可能性があります。

②抜歯・非抜歯は治療の手段の1つであるということ

 歯を抜くか抜かないかは矯正治療の手段の1つであって決して目的ではありません。歯を治療によって歯をどこに移動させどんな咬み合わせをつくるかという目標が予め決められるべきで、目標が決まってこそどんな装置を使うか、歯を並べるスペースはどうやって獲得するか(歯を抜くか抜かないか)といった手段が初めて決められるのです。

公益社団法人日本臨床矯正歯科医会のオルソドンティストがめざす「矯正歯科治療」とは

心身の健康を達成するために私たちが目指す"矯正歯科治療"とは-

矯正歯科治療は、歯の位置やあごの骨を長い時間かけて少しずつ変化させ、悪い歯並びを治し、よい咬み合わせを実現させていきます。それは顎や顔を構成する骨格が調和のとれている状態で、口腔機能の改善と向上を伴うことを前提としています。その結果として、審美的な歯並びや口元、顔貌になることが良質な矯正歯科治療に求められるものです。
すなわち

よい咬み合わせきれいな歯並び
感じのよい口もと口の健康の増進
治療後の安定性

をトータライズして獲得することであり、見た目のきれいさだけではなく機能が伴い、さらには生涯にわたってきれいな歯並びと健康を維持できることを目指しています。矯正歯科治療が美容を目的にしていると思われることは、会員の本意ではありません。

日本臨床矯正歯科医会「新・東京宣言」

国民の心身の健康とその生涯維持には、健康は口腔を獲得する必要があり、そのために適切な矯正歯科治療は重要な役割を果たします。その認識に立って本会会員は、臨床的および倫理的判断に則り、患者さんの立場に立った矯正歯科医療を実践します。また保健・教育活動にも積極的に参加し、矯正歯科治療の社会的認知と共通理解が得られるように努め、国民と医療を共有していくことを宣言します。

1 私達は、矯正歯科専門開業医として自己研鑽に努め、その専門的知識・技術をもって良質な矯正歯科医療と安心できる医療態勢を提供することで、国民の健康増進、生活の質の向上に貢献します。
2 私達は、広報活動を通して、矯正歯科医療の正しい情報を社会に広く伝えます。
3 私達は、国内外の矯正歯科医や矯正歯科に関係するすべての職業人と連携し、矯正歯科医療の発展を通して社会に貢献します。
4 私達は、医療人としての倫理観に基づき,法令遵守に努め、患者さんの同意を尊重して、国民から信頼される矯正歯科医を目指します。

※平成25年2月6日東京で開催された日本臨床矯正歯科医会創立40周年記念大会にて「新・東京宣言」を採択しました。


安心して治療を受けていただくための6つの指針
(矯正歯科診療所が備えるべき6つのポイント)

適切な矯正歯科治療を受けていただくために、2015年、本会では患者自身が信頼できる矯正歯科を見極めるための"受診時の目安"として、6つの指針を提言として掲げました。

重要:(1)頭部X線規格写真(セファログラム)検査をしている
セファログラムは診断のグローバル・スタンダードで、特に子どもの患者さんでは顎顔面の成長バランスや成長方向、量の予測をするために不可欠な検査です。

重要:(2)精密検査を実施し、それを分析・診断した上で治療をしている
矯正歯科治療を行うためには、臨床検査として①口腔内検査 ②顎機能と咬合機能の検査 ③顎のプロポーション検査 ④筋機能の検査、また、診断資料の分析として①模型分析 ②頭部X線規格写真の分析 などを実施した上で診断を行うことが不可欠です。

重要:(3)治療計画、治療費用について詳細に説明をしている
矯正歯科では、検査結果を詳細に分析した上で診断を行い,治療計画を立案します。
治療計画については、わかりやすい治療のゴールやそのプロセスを患者さんに示しながら、それぞれの患者さんに適した治療装置とその効果,治療期間、第二期治療の可能性(子どもの場合)、保定、後戻りの可能性や治療のメリット・デメリットおよび抜歯・非抜歯について説明を行います。
治療費用についても、治療費、調節料、支払い方法(一括・分割)、装置が壊れたときの対応、転医あるいは中止する場合の精算についても詳細説明を行い、患者さんの同意を得てから治療を行います。

重要:(4)長い期間を要する治療中の転医、その際の治療費精算まで説明をしている
本会には治療中に転居等で診療所を変わらざるを得なくなった患者さんに、転居先にできるだけ近い矯正歯科を紹介する「転医システム」があります。
【紹介先】当会所属の矯正歯科専門開業医
     治療費の過不足も当会の取り決め目安に沿って精算

推奨:(5)常勤の矯正歯科医がいる
常勤の矯正歯科医がいることは、以下のようなメリットにつながります。
・治療において画像診断ができる撮影機器などの環境・設備が整っている
・矯正装置が取れてしまったなど器具に不具合があっても、すぐに対応できる
・同じ担当医による一貫治療が行える

推奨:(6)専門知識がある衛生士、スタッフがいる
矯正歯科への豊富な経験と知識があるスタッフがいることは、以下のようなメリットにつながります。
・矯正歯科医の指導監督のもとに、患者さんへのさまざまな対応が可能となる
・矯正装置への口腔衛生指導が行える
・治療中の食事指導が行える

本会は、より多くの皆様に矯正歯科治療についての正しい知識を身につけていただくとともに、歯科全体における矯正歯科医療の向上と自己研鑽に努め、質の高い治療と安心を提供していきます。

2016年4月 5日

報道関係者の皆様へ

 公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会は、ウェブサイトや書籍の出版をとおして、矯正歯科治療のメリット・デメリットを含めた正しい情報の発信に努めています。

 また2012年度よりメディアリレーションにも力を入れ、その一環として、記者・医療ジャーナリストの皆様をお招きして記者懇談会やプレスセミナーを開催しております。

賛助会員

 公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会は正会員・準会員の他に、本会の目的に賛同し、本会の発展のため協力する法人または団体のために賛助会員の資格を設けております。

 賛助会員は本法人の大会・例会に参加できること以外に、大会開催時にブースおよび広告を出すことができ、本会からの各種情報も受け取ることができます。

 本会は公益社団法人として国民の健康増進を図るため、正しい矯正歯科治療の知識を広く社会に普及するとともに矯正歯科医療の向上を図るべく鋭意努力しております。本会の趣旨に賛同される法人または団体で、賛助会員入会をご希望の場合には、本会事務局か協力団体である日本歯科矯正器材協議会(http://www.kyouseikizai.org)にお問い合わせ下さい。

入会フォームへ

入会フォーム記入後、事務局より別途入会用紙を郵送させて頂きます。こちらをご記入・ご捺印の上、事務局までご返送ください。※お手続きの関係で、約1週間~2週間ほどのお時間をいただきます。お申し込み後、1週間経過しても何の連絡も無い場合には、担当理事までご連絡をお願いします。

矯正歯科開業医・大学矯正科の先生方へ

 公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会は、1973年に設立された歴史ある矯正歯科専門開業医の会で、より多くの人たちに、健康な歯、美しい笑顔を獲得していただけるよう、さまざまな活動を行っております。

 ご存じの通り、矯正歯科治療は予防意識の高まり、技術・材料の進歩により、広く国民に求められる歯科治療となりました。しかしその一方で、矯正歯科治療が単に美容を目的にしていると間違った認識をされていることも多いのが事実です。

 また、テレビ、週刊誌、インターネットにおいて、玉石混交の情報が多く氾濫し、安易な治療法が次々と紹介され、残念な治療結果に矯正歯科治療への信頼を失っている患者さんが少なからずいらっしゃることも非常に残念なことです。

 このような事態が見受けられる現在、矯正歯科治療に対する正しい理解を一般に広めることが急務であると思われます。こういう時期であるからこそ、矯正専門開業医が力を合わせて直面する問題点を解決し、矯正歯科治療を通して社会にますます貢献することが必要であると考えられます。

 是非とも本会の理念と活動にご賛同いただきご入会いただけますよう、ご案内申し上げます。

本会と日本学校歯科医会との関係

 本会会員は矯正歯科医ですが、日本歯科医師会の会員でもあり、地域の歯科医師会では公衆衛生事業などの活動に積極的に関与しております。また、矯正歯科治療を生業としているため成長期の児童に関わる機会が多く、会員の大半は学校歯科医として地元に密着した活動を続けております。

 日本臨床矯正歯科医会として日本学校歯科医会との関係を構築したのは、平成20年11月横浜で行われた第72回日本学校歯科保健研究大会にて、「歯並びと噛み合わせのガイドブック」の配布を始めたことに端を発します。その「ガイドブック」は、広範囲に渡る矯正歯科治療の情報、その質の高さについて、日本学校歯科医会会誌に推薦文が掲載されました。その後、このガイドブックの縮小版を製作して、配布を続けてきました。

 平成26年からは学術展示による情報発信を始めました。本会の学術研究内容を元に、第78回全国学校保健研究大会にて「上顎犬歯萌出異常による切歯歯根吸収の危険性」、第79回全国学校保健研究大会にて「上顎犬歯萌出異常による切歯歯根吸収の危険性--その臨床対応」と題して、学術展示による発表を行ってきました。平行して、東京都学校歯科医会大会にも同じ内容でポスター発表をしております。

平成28年度日本臨床矯正歯科医会 千葉大会

 平成29年2月22日、23日に第44回日本臨床矯正歯科医会千葉大会が行われます。「新しい連携の形」というテーマで、学校歯科保健に関わる専門職すなわち、学校歯科医の先生方、養護教諭の先生方との連携を強化する企画、シンポジウムを予定しています。

 ご不明の点は、お近くの本会会員にお問い合わせいただくか、あるいは本会事務局にご連絡ください。

医師・医療関係者の皆様へ

矯正歯科治療は一般的に自費診療ですが、厚生労働省が定めた特定の症状に限って健康保険が適用されます。近年、矯正歯科治療に関する保険適応が徐々に増えてきています。
しかし、このことはまだあまり周知されていません。
以下の疾患は、歯科矯正診断料算定の施設基準を満たしている医療機関にて保険診療が適応となっておりますので、患者さんへ周知にご協力いただきますよう、お願いいたします。

(適応疾患名 50 音順)
・ウイリアムズ症候群
・エリス・ヴァン・クレベルド症候群
・外胚葉異形成症
・顎変形症(注)
・カブキ症候群
・顔面半側肥大症
・顔面裂
・偽性低アルドステロン症(ゴードン症候群)
・基底細胞母斑症候群
・口-顔-指症候群
・口笛顔貌症候群
・クラインフェルター症候群
・グリコサミノグリカン代謝障害(ムコ多糖症)
・クリッペル・トレノーネイ・ウェーバー症候群
・骨形成不全症
・ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む)
・鎖骨・頭蓋骨異形成症
・色素失調症
・小舌症
・唇顎口蓋裂
・神経線維腫症
・スティックラー症候群
・成長ホルモン分泌不全性低身長症
・常染色体欠失症候群
・全前脳(胞)症
・先天性ミオパチー(先天性筋ジストロフィーを含む)
・ソトス症候群
・大理石骨病
・ダウン症候群
・ターナー症候群
・チャージ症候群
・頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群、尖頭合指症を含む)
・トリチャーコリンズ症候群
・軟骨形成不全症
・ヌーナン症候群
・濃化異骨症
・ピエールロバン症候群
・ビンダー症候群
・プラダーウィリー症候群
・ベックウィズ・ヴィートマン症候群
・ポリエックス症候群
・マーシャル症候群
・マルファン症候群
・メービウス症候群
・ラーセン症候群
・ラッセルシルバー症候群
・ルビンスタイン-ティビ症候群
・リング18症候群
・リンパ管腫
・6歯以上の先天性部分(性)無歯症
・ロンベルグ症候群
・ほか39疾患(略)

(注)顎変形症は顎口腔機能診断料算定の施設基準も満たしている必要があります。
(平成28年4月1日時点の情報です。適応疾患に関する最新情報は日本臨床矯正歯科医会のホームページをご参照ください。)

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