2019年1月 9日

安心して治療を受けていただくための6つの指針

安心して治療を受けていただくための6つの指針
(矯正歯科診療所が備えるべき6つのポイント)

適切な矯正歯科治療を受けていただくために、2015年、本会では患者自身が信頼できる矯正歯科を見極めるための"受診時の目安"として、6つの指針を提言として掲げました。

重要:(1)頭部X線規格写真(セファログラム)検査をしている
セファログラムは診断のグローバル・スタンダードで、特に子どもの患者さんでは顎顔面の成長バランスや成長方向、量の予測をするために不可欠な検査です。

重要:(2)精密検査を実施し、それを分析・診断した上で治療をしている
矯正歯科治療を行うためには、臨床検査として①口腔内検査 ②顎機能と咬合機能の検査 ③顎のプロポーション検査 ④筋機能の検査、また、診断資料の分析として①模型分析 ②頭部X線規格写真の分析 などを実施した上で診断を行うことが不可欠です。

重要:(3)治療計画、治療費用について詳細に説明をしている
矯正歯科では、検査結果を詳細に分析した上で診断を行い,治療計画を立案します。
治療計画については、わかりやすい治療のゴールやそのプロセスを患者さんに示しながら、それぞれの患者さんに適した治療装置とその効果,治療期間、第二期治療の可能性(子どもの場合)、保定、後戻りの可能性や治療のメリット・デメリットおよび抜歯・非抜歯について説明を行います。
治療費用についても、治療費、調節料、支払い方法(一括・分割)、装置が壊れたときの対応、転医あるいは中止する場合の精算についても詳細説明を行い、患者さんの同意を得てから治療を行います。

重要:(4)長い期間を要する治療中の転医、その際の治療費精算まで説明をしている
本会には治療中に転居等で診療所を変わらざるを得なくなった患者さんに、転居先にできるだけ近い矯正歯科を紹介する「転医システム」があります。
【紹介先】当会所属の矯正歯科専門開業医
     治療費の過不足も当会の取り決め目安に沿って精算

推奨:(5)常勤の矯正歯科医がいる
常勤の矯正歯科医がいることは、以下のようなメリットにつながります。
・治療において画像診断ができる撮影機器などの環境・設備が整っている
・矯正装置が取れてしまったなど器具に不具合があっても、すぐに対応できる
・同じ担当医による一貫治療が行える

推奨:(6)専門知識がある衛生士、スタッフがいる
矯正歯科への豊富な経験と知識があるスタッフがいることは、以下のようなメリットにつながります。
・矯正歯科医の指導監督のもとに、患者さんへのさまざまな対応が可能となる
・矯正装置への口腔衛生指導が行える
・治療中の食事指導が行える

本会は、より多くの皆様に矯正歯科治療についての正しい知識を身につけていただくとともに、歯科全体における矯正歯科医療の向上と自己研鑽に努め、質の高い治療と安心を提供していきます。

カスタムメイドのアライナー型矯正装置(マウスピース型矯正装置)に対する本会の見解

1.カスタムメイドのアライナー型矯正(歯科)装置とは

マウスピース矯正やアライナー矯正ともいわれ(以下 マウスピース型矯正装置と表記します)、患者の石膏模型やデジタルデータを技工所に送り、そこで作製された厚さ0.5mm程度の透明なマウスピースを一日約20時間以上口腔内に装着し、歯の移動に伴い数種類のマウスピースを順次使用して歯並びを整える装置です。

厚生労働省の見解では、アライナー型矯正装置は国内外で製作されたものを問わず日本国の薬機法(旧薬事法)上の医療機器には該当せず、医薬品副作用被害救済制度の対象外とのことです。診療にあたっては、「歯科医師が患者への十分な情報提供を行ったうえで患者の理解と同意を得ることを遵守し、歯科医師の全面的な責任の下で使用されたい。」との指示が出されています。(日本矯正歯科学会HPより一部改変)

2.マウスピース型矯正装置のメリット・デメリット

-マルチブラケット装置との比較―
マウスピース型矯正装置のメリットとデメリットを、現在の矯正歯科治療の装置として最も普及し、また、治療効果が優れている「マルチブラケット装置」と比較してみます。

【メリット】
・見た目が目立たない。
・金属アレルギーなどの理由でマルチブラケット装置が使えない患者にも使用可能である。
・必要に応じて患者自身で取り外すことができ口腔清掃が容易である。

【デメリット】
・治療が患者の自己管理に委ねられているため予期しない結果が生じることがある。
・歯の移動の限界があるため治せない症状がある。

3.本会としての危惧

マウスピース型矯正装置は患者の使用状況に治療結果が大きくが委ねられ、また、歯の移動範囲も限られていることから、予想外の治療経過をたどることや、目標とした治療結果が得られないことがあります。そのようなときには代替の治療法としてマルチブラケット装置によるリカバーが必要となるため、マルチブラケット装置による治療技術を習得した歯科医師によって治療がなされなければなりません。

近年、矯正歯科医を介さずに本装置を使用するビジネスモデルが提案され、矯正歯科治療の技術を習得していない歯科医師による治療例が急激に増えています。

矯正歯科治療はその結果がでるまでに年単位の期間がかかるため、不適切な治療によるトラブルが顕在化するまでしばらく時間はかかるかもしれませんが、既にそのような兆候は本会の患者相談窓口「矯正歯科なんでも相談」にも表れていて、今後数年の間に激増することが危惧されます。

4.マウスピース型矯正装置に対する本会の見解

(1)マウスピース型矯正装置には推奨されない不正咬合があります。
マウスピース型矯正装置は1990年代に開発され、その安全性と有効性は科学的に高いレベルで明らかにされてはいません。また、歯の移動にも限界があるため適応症を見極めることのできる矯正歯科医による治療が必要です。

(2)治療のゴールはマルチブラケット装置と同等でなければならない。
矯正歯科治療は健康になるための医療です。そのためマウスピース型矯正装置でも従来のマルチブラケット装置でも治療のゴールが変わるべきではありません。したがって治療を行う歯科医師にはマルチブラケット装置による治療のゴールを設定できる技能が求められます。

(3)マウスピース型矯正装置を使用する歯科医師は、マルチブラケット装置による治療技術を習得していることが不可欠である。
本装置による治療を始めた後、何らかの理由で使えないとき、また予定した効果が出ないときには別の装置でリカバーしなければなりません。そのためには、マルチブラケット装置によって適切に治す必要があります。たとえ患者と歯科医師の間で本装置による治療結果は保証されるものではないとの同意を得ていても、代替装置で良い結果が得られる場合はその治療を提案し行うことは医師として当然の責務です。

(4)矯正歯科治療が適切に行われる治療環境が不可欠である。
すべての矯正歯科治療に言えることが、マウスピース型矯正装置を使用する際にも当てはまります。すなわち歯科医師個人の技量だけではなくその技量を発揮できる環境で治療が行われなければなりません。本会はそれに関する6つの指針を提言しています。

5.チェックリスト

−マウスピース型矯正装置を用いた矯正歯科治療を安心して受けていただくために知っておきたいこと−

本会の提唱する、安心して治療を受けていただくための6つの指針(矯正歯科診療所が備えるべき6つのポイント)をご存知ですか?
マウスピース型矯正装置は国内外で作製されたものを問わず日本国の薬機法上の医療機器には該当しないため医薬品副作用被害救済制度の対象外となることをご存知ですか?
マウスピース型矯正装置を用いて治療する歯科医師には、診断、治療計画、設計等について矯正歯科学的な専門的知識が必要であることをご存知ですか?
マウスピース型矯正装置の適用には推奨されない症例があることをご存知ですか?
マウスピース型矯正装置による治療の結果は、装着時間(推奨される装着時間は1日20時間以上)に大きく左右されることをご存知ですか?
マウスピース型矯正装置の治療で十分な結果が得られなかった場合、治療目標を達成するためにマルチブラケット法による追加の治療が必要となることをご存知ですか?

日本臨床矯正歯科医会が目指す矯正歯科治療とは

心身の健康を達成するために私たちが目指す"矯正歯科治療"とは-

矯正歯科治療は、歯の位置やあごの骨を長い時間かけて少しずつ変化させ、悪い歯並びを治し、よい咬み合わせを実現させていきます。それは顎や顔を構成する骨格が調和のとれている状態で、口腔機能の改善と向上を伴うことを前提としています。その結果として、審美的な歯並びや口元、顔貌になることが良質な矯正歯科治療に求められるものです。
すなわち

よい咬み合わせきれいな歯並び
感じのよい口もと口の健康の増進
治療後の安定性

をトータライズして獲得することであり、見た目のきれいさだけではなく機能が伴い、さらには生涯にわたってきれいな歯並びと健康を維持できることを目指しています。矯正歯科治療が美容を目的にしていると思われることは、会員の本意ではありません。

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