|質の高い矯正治療と安心の提供に努める矯正歯科専門の開業医団体「日本臨床矯正歯科医会」

矯正歯科治療について:目次

>> 1.矯正歯科治療はなぜ必要?
>> 2.歯が動くって本当?~歯が動くメカニズム
>> 3.不正咬合の種類と治療法
>> 4.治療のすすめ方
>> 5.矯正歯科治療を受けるには
>> 6.抜歯・非抜歯について
>> 7.保険で治療可能な矯正歯科治療について

1.矯正歯科治療はなぜ必要?

歯並びと咬み合わせ

咬み合わせと歯並び咬み合わせと歯並び
 あなたは、奥歯を咬みしめたとき、前歯も横の歯もしっかり咬んでいますか?ファスナーも歯車も、歯がしっかり咬み合って、はじめて持ち前の機能を発揮します。同じように歯は、歯並びのきれいさだけではなく、すべての歯がきちんと咬み合い、あごの動きによく合って、食べ物を噛めなければなりません。一見きれいな歯並びでも、上下の歯がきちんと咬み合っているとは限りません。
 大切なのは、咬み合わせ!「歯並びをよくして、もっときれいになりたい」と、矯正歯科医を訪れる人はたくさんいますが、「咬み合わせをよくしたい」という人は、まだ少数派です。しかし、「きれいな歯並び」とは”よく噛める、正しい咬み合わせ”であることを知ってください。

8020と咬み合わせ

「8020運動」ってご存知ですか?
 「8020運動」とは厚生労働省と日本歯科医師会により推進されている、健康で豊かな生活を送るために欠かせない歯を80歳で20本以上残すことを目標にした運動です。
 20本以上の歯があるとおせんべいやフランスパン、お肉やごぼうなど、たいていのものを噛むことができます。また80歳で20本以上の歯を持つ人は、なんでも好きなものを不自由なく食べることができるので、外で友人と食事をすることもいといません。
 その結果、歯の数が少ない人に比べて社交的であったり、おしゃれであったり、常に機嫌がいいなどの傾向がみられるとの調査もあります。
 歯並びや咬み合わせに不具合があると、食べ物を前歯で咬み切り、奥歯ですりつぶすという歯の大切な機能を十分に果たすことができません。
 さらに、80歳で20本以上の歯が残っている人達を調べてみると、前歯や奥歯がしっかりと咬み合い安定していました。特に8020達成者には、受け口(反対咬合))はいなかったという報告もあります。(出典:日本歯科医師会雑誌 1999;52 茂木悦子ら)
このことから、歯並びや咬み合わせは全身の健康状態と強く関連していると考えられます。つまり、いつまでも健康で元気に生活するためには、咬み合わせは無視できない要因なのです。

矯正歯科治療のメリットとリスク

メリットⅠ
 矯正歯科の目的は、歯並び、咬み合わせの改善にあります。さらに良好な咬合の維持することで患者さんのQOL(Quality Of Life)の向上を目指します。
① 歯科疾患の予防
② あご骨の成長発育障害の予防
③ そしゃく機能の改善と維持
④ 口唇閉鎖不全の改善
⑤ 発音の改善
⑥ 顎関節と咬合との調和
⑦ 体のバランスや運動能力の改善
⑧ 一般歯科治療を行うために必要な歯の移動が可能になる

メリットⅡ
 矯正歯科治療をすると、性格がポジティブに向かう傾向があるとされています。 ともすると、わたしたち矯正歯科医は、歯並びや咬み合わせの改善、さらには副次的なその予防に目を向けますが、矯正歯科を受診する患者さんの多くは外見の改善に大きな価値をおいています。わたしたち矯正歯科医は、患者さんが健康で美しい外見を求めることを後押ししています。
リスク
 矯正歯科治療を始め、継続していくことによって生じるリスクについて、良質な治療を行う矯正歯科医師であれば、患者さんへ必ず事前に説明を行っています。またこれらのリスクが歯の健康に支障をきたさないレベルに留めるような治療を進めていきます。
 もし、矯正歯科医師がこれらのリスクを事前に説明しないで治療をする場合は、逆に注意が必要と言えます。
① う蝕、歯肉炎、歯周炎
 長期的な矯正装置の装着によって、歯の磨き残しから生まれるリスクです。
② 治療期間の延長
 1.成長予測の困難性
 顎骨の成長予測は難しく、成長発育の量や方向およじ時期を常に考慮し治療を行う必要があります。この判断を誤ったり、予想外の成長発育が起こった場合、治療期間が長くなることがあります。
 2.不適切なメカニクス
 歯の移動を行う際、選択される矯正装置の力が適切なものでなければなりません。計画どおりに歯の移動をコントロールできず、結果として治療期間が長くなり、歯に負担(う蝕、歯根吸収)をかけてしまうケースがあります。
 3.患者の協力不足
 定期的な来院、口腔ケア、矯正装置の使用等において患者さんの協力が得られない 場合、治療の中断や延長を余議なくされる場合があります。
③ 歯根吸収の発現
 ある程度の歯根吸収は発現しますが、適正な矯正力による歯根吸収は修復され、最小限に留めることができます。また歯根吸収を引き起こすような矯正力をかけることはできるだけ避けるようにします。
④ 歯肉退縮
 矯正歯科治療に伴い、歯肉の退縮や付着歯肉の喪失を生じることはあります。このような現象は、歯を支えるための歯槽骨がなく、角化した付着歯肉がほとんどない場合に特に頻繁に認められます。歯肉退縮を認める歯については、治療を開始する前に付着歯肉を増大して歯肉を上げるなどの処置を考慮します。

2.歯が動くって本当?~歯が動くメカニズム

歯が動くって本当? 歯とその周囲の歯槽骨(しそうこつ)との間には、繊維に富んだ歯根膜(しこんまく)という組織があります。動かしたい歯に矯正装置で適度な力を加え、この歯根膜を圧迫すると、そこに骨を吸収する細胞が現れます。反対側の引っ張られる歯根膜には、骨を作るもとになる細胞ができます。そうして歯はゆっくりと動きだすのです。これは歯が、骨の中を通って自然に生えてくるときに起こっている変化と同じメカニズムです。 矯正治療は、矯正技術で加える力の大きさや方向を十分に考慮し、歯を無理なく自然の場所へ動かすのです。

矯正歯科治療の限界

 このように歯は歯槽骨の中で移動することができます。
 このことは一方で、矯正歯科治療で歯を動かしていく際の限界を表しているのです。

① 骨格的な不正に対する歯の移動の限界
② 歯の移動による顔貌変化の限界
③ オーバージェット(上下顎の前歯の距離の値が大きいもの)
④ 上下顎の正中線の一致
⑤ 過去の抜歯や先天欠如による歯の隙間(空隙閉鎖)

 歯槽骨をはみ出してた歯は長持ちしません。したがって不正咬合の原因が骨格的な不調和によるものであれば、歯の移動のみで理想的な咬合関係を獲得することが困難な場合があります。



3.不正咬合の種類と治療法

上顎前突(出っ歯)の治療法

上顎前突(出っ歯)の治療法
 成長期のお子さんで、骨の大きさに問題がある場合は上顎骨の過剰発育を抑えたり下顎骨の成長を促進したりします。これは成長の早い時期(8才~10才)に行うのが望ましいです。
 さらに奥歯に原因がある場合は、適切な矯正装置で上下の奥歯も動かし、正しい咬み合わせにします。必要に応じて、成長期間中上下の顎の成長の管理をします。
 次に前歯を移動させて引っ込めたり、その他のすべての永久歯に器具をつけて最終的な咬み合わせを獲得します。
 歯が動いていく隙間をつくるため、抜歯をすることもあります。
特に顎の大きさに問題がある場合には、口腔外科医の協力で骨の手術を併用することもあります。

下顎前突(反対咬合・受け口)の治療法

下顎前突(反対咬合・受け口)の治療法
 適切な矯正装置で上下の前歯を動かし、正しい咬み合わせにします。これは成長の早い時期(6~8才)に開始するのが望ましいです。
 同時に、成長期にお子さんで、骨の大きさに問題がある場合は下顎骨の過剰発育を抑えたり、上顎骨の成長を促進したりします。
 必要に応じて、成長期間中上下の顎の成長の管理をします。
 成長の終了後に、すべての永久歯に器具をつけて最終的な咬み合わせを獲得します。
 特に顎の大きさに問題がある場合には、口腔外科医の協力で骨の手術を併用することもあります。

叢生(八重歯など)の治療法

叢生(八重歯など)の治療法
 成長期のお子さんで、骨格に問題がある場合は、成長期間中上下の顎の成長の管理をします。歯だけが問題の場合は、永久歯がすべて揃うまで、しばらく観察を続けます。
 しかし、がたがたのために上下の歯がうまく咬み合わない場合には、部分的に悪いところのみを早期に治療する場合もあります。永久歯がすべて揃った段階で、すべての永久歯に器具をつけて最終的な咬み合わせを獲得します。歯が動いていく隙間をつくるため、抜歯をすることもあります。

開咬の治療法

開咬の治療法
 成長期のお子さんで、骨の大きさに問題がある場合は、成長期間中上下の顎の成長の管理をします。指しゃぶりや舌のくせがある場合には、適切な矯正装置を用いるか、舌やお口の周りの筋肉のトレーニングを行ってそれらの影響をなくし、正しい咬み合わせにします。これは成長の早い時期(6才~8才)に開始するのが望ましいです。
 鼻・のどに慢性的な病気があり、いつも口で呼吸をしている場合も顎の発育に問題がでることがありますので、耳鼻科の先生の診察も必要になることがあります。
 成長期間中、必要に応じて、上下の顎の成長の管理をします。
成長の終了後に、すべての永久歯に器具をつけて最終的な咬み合わせを獲得します。
 歯が動いていく隙間をつくるため、抜歯をすることもあります。
特に顎の大きさに問題がある場合には、口腔外科医の協力で骨の手術を併用することもあります。

過蓋咬合の治療法

過蓋咬合の治療法
 成長期のお子さんで、骨の大きさに問題がある場合は、成長期間中上下の顎の成長の管理をします。これは成長の早い時期(8才~10才)に開始するのが望ましいです。
 一般的に引っ込み過ぎた上の前歯を先に治します。
 成長期間中、必要に応じて、上下の顎の成長の管理をします。
成長の終了後に、すべての永久歯に器具をつけて最終的な咬み合わせを獲得します。
 歯が動いていく隙間をつくるため、抜歯をすることもあります。
 特に顎の大きさに問題がある場合には、口腔外科医の協力で骨の手術を併用することもあります。

矯正装置

 矯正装置には、たくさんの種類があります。一般には、歯の表面に金属やレジン、セラミックの小さなブラケットをつけ、それに細いワイヤーを通して歯を動かす固定式の装置を使います。プラスチック製の取りはずし式装置を使う方法や、フェイシャルマスク、ヘッドギアなど口の外で使う装置もあります。
固定式矯正装置
固定式矯正装置固定式矯正装置
固定式矯正装置固定式矯正装置
固定式矯正装置固定式矯正装置

取りはずし式矯正装置
取りはずし式矯正装置取りはずし式矯正装置
取りはずし式矯正装置取りはずし式矯正装置取りはずし式矯正装置

4.治療のすすめ方

治療のすすめ方

①検査・診断の重要性

 矯正歯科治療を行うためには、臨床検査として①口腔内検査 ②顎機能と咬合機能の検査 ③顎のプロポーション検査 ④筋機能の検査などを行います。セファログラム(頭部X線規格写真)の撮影は矯正歯科の検査で特徴的で、診断のグローバル・スタンダードです。特に子どもの患者さんでは顎顔面の成長バランスや成長方向、量の予測をするために不可欠な検査です。
 また、診断資料の分析として①模型分析 ②頭部X線規格写真の分析 などを実施した上で診断、治療方針・治療計画を決定します。
 治療計画については、わかりやすい治療のゴールやそのプロセスを患者さんに示しながら、それぞれの患者さんに適した治療装置とその効果,治療期間、第2期治療の可能性(子どもの場合)、保定、後戻りの可能性や治療のメリット・デメリットおよび抜歯・非抜歯について説明を行います。

②治療開始時期

子どもの矯正歯科治療
 子どもの歯(乳歯)から大人の歯(永久歯)の生え変わりはある程度時期が決まっています。親知らず以外の永久歯が全て生えそろうのは中学生くらいです。
 歯並びや咬み合わせは、全ての永久歯がしっかり並んで、それぞれの歯がしっかり噛み合ってこそ健康的に長持ちするのです。したがって、早く治療を開始してもその子どもさんの成長が止まって咬み合わせが安定していることを確認するまでは矯正歯科治療や管理が続くことになります。
 子どもの矯正歯科治療を始めるにあたっての大原則は、治療期間や本人の負担をなるべく軽減するために「後からでも改善できることはあまり早くから介入しないこと」です。
早期に矯正治療を着手しないといけない症例は問題は、そのまま放置しておくと今後起こる成長に悪い影響を与えると判断されるものだけです。
 それ以外の場合は早期に着手しても、後々歯の生え変わりや成長とともにまた問題が再発することもがあります。最も効果の出やすい最適な開始時期まで待ちましょう。
 ただし症状や患者さんの骨格パターンによっては、早く治療を開始したほうがいい場合も少なからずあります。
 歯並びやかみ合わせが気になったら受診は早めに、治療開始時期は矯正歯科医に見極めてもらうことをお勧めいたします。
☆子どもで始めた場合
【メリット】

○これから起こる成長を利用しやすい。
○虫歯や修復歯、欠損歯が少ないので、矯正歯科治療を行う上での選択肢に幅がある。
○歯の移動に伴う歯肉の退縮や骨の減少が起こりにくい。
【デメリット】
○保護者の方の意見が優先されがちで、患者さん本人が消極的な場合は、治療の協力(歯みがきも含めて)が得られにくい。
○成長に伴う環境の変化、また患者さん自身にも変化が見られるので、治療に対するモチベーションを維持するために、特に注意を払う必要がある。
大人の矯正歯科治療
 矯正歯科治療は子どもの時にするものだから、大人になったらもうできないと思って諦めかけている人も案外多いようです。
 大人の患者さんには歯周病のリスクを抱えている、子供に比べて歯の動きが遅い、歯に詰め物やかぶせ物をしている箇所が多い、骨の成長を期待できない、…などの特徴を持っている方がほとんどです。その一方で、歯の矯正歯科治療中にいろんな装置を使うこと、丁寧に歯磨きを行うこと、きちんと来院することなどについて患者さんの協力が得られやすいというメリットもあります。
☆大人で始めた場合
【メリット】

○本人の意志で治療を開始するので、その後の治療においても協力が得られやすい。
○治療に対しての関心や理解力が高い。
○すぐに本格的な治療が開始できる。
【デメリット】
○虫歯や修復歯、欠損歯が多い。
○歯周病に罹患している場合が多く、治療に対して注意が必要である。
○歯の移動に伴い歯肉の退縮や骨の減少が起こる可能性がある。

③保定までが矯正歯科治療

 矯正歯科治療の本当の目的は、患者さんが80歳になっても20本以上の歯が残っているように、歯と歯並びを長持ちさせることにあります。
 そのために、歯がきれいに並んで理想的なかみ合わせになったら、ある程度の期間、歯をとめて、なるべく長く維持させる必要があります。
これを保定といいます。
 保定に使う装置は取り外しができるものや表から見えにくいものなどがほとんどで、歯を動かす治療のときに使う装置に比べるとかなり負担が減ります。また、来院も4~6か月に1回程度になります。

5.矯正歯科治療を受けるには

①良質な矯正歯科治療とは

・機能と審美性の両方をバランスよく向上することが大切
矯正歯科治療は、歯並びと咬み合わせの改善を目的に治療を行います。それは顎や顔を構成する骨格が調和のとれている状態で、口腔機能の改善と向上を伴うことを前提としています。その結果として、審美的な歯並びや口元、顔貌になることが良質な矯正歯科治療に求められるものです。
・治療において患者さんへの説明と同意、説明責任が果たされているか 
とはいえ歯並び、咬み合せや口元、顔のバランスは、受診年齢や症状の程度により、治療結果には限界があります。したがって、矯正歯科治療の質は、単に診療技術の高さだけではなく、治療前に治療方針、予想治療期間や治療費、また治療の限界などを十分に患者さんやご家族に説明を行い、同意の上で治療を開始し、また治療中も進行状況や問題点を丁寧に行うといった、説明と同意、また説明責任を十分に果たされているか否かも、矯正歯科治療の質を定義する際に大切なことです。

②矯正歯科治療の専門性について

大学卒業後に歯科医師免許を持つ全員が「矯正歯科治療」ができるわけではありません。
歯科医師が矯正歯科治療を行う場合、歯科大学矯正歯科に在籍し、あらためて専門的な教育と研修を行う必要性があります。この専門的な教育と研修の必要性は一般歯科分野と大きく異なるため、矯正歯科は専門性が高いといわれています。
・認定医・臨床指導医について
日本には歯科医師が約10万人いますが、その中で様々な形で矯正歯科治療を行っている歯科医は約3万人います(厚生労働省資料より)。しかしながら全国の歯科大学の矯正歯科講座あるいは医局で何らかの専門教育と研修を受けた歯科医師が中心に所属している日本矯正歯科学会の会員は約6000名です。その中でも3~5年間の教育と研修を終了し、専門知識と診療技術の資格試験をパスして認定された日本矯正歯科学会認定医は約2500名です。
そしてさらに認定医の中でも高いレベルの資格認定を受けた約300名の日本矯正歯科学会臨床指導医がいます。矯正歯科医の受けた教育また研修の面からは、上記の日本矯正歯科学会認定医(全国に約2500名)が専門知識や診療技術の面から、適切で信頼できる矯正歯科医と考えることができるでしょう。

・歯科の標榜について
歯科医師であれば診療所の標榜科目として、その専門分野の教育や研修の経歴、治療経験の有無に関係なく歯科、小児歯科、口腔外科、矯正歯科の4つの診療科目を標榜することができます。したがって歯科医院の標榜科目だけでは、矯正歯科治療を行う歯科医師の専門的教育や研修の経歴を判断することはできません。
・安心できる医療態勢について
前項でもふれたように、矯正歯科治療を行う上では検査や診断が欠かせません。したがって診療所にはそれらに必要な機器や設備が整っていることが良質な矯正歯科治療を提供するためには不可欠です。
また常勤の矯正歯科医やスタッフがいることも矯正歯科治療を受ける診療所選びの際にはぜひ推奨される条件です。
常勤の矯正歯科医がいると
・矯正装置が取れてしまったなど器具に不具合があっても、すぐに対応できる
・同じ担当医による一貫治療が行える
などのメリットがあります。
また豊富な経験や専門知識がある歯科衛生士やスタッフがいると
・矯正歯科医の指導監督のもとに、患者さんへのさまざまな対応が可能となる
・矯正装置への口腔衛生指導が行える
・治療中の食事指導が行える
などのメリットがあります。

③転医システムについて

矯正歯科治療は経過が長いので、その間に進学や転勤による遠隔地への転居などで治療を始めた診療所への通院が困難になることがあります。その際に治療を引き継いでくれる転医先の紹介や診断資料や治療経過を含む転医資料の作成、また治療の進行状況に応じての治療費の清算と返金が行われるシステムを有していることも、患者さんが安心して受診できる良質な矯正歯科治療の大きな要因です。本会には治療中に転居等で診療所を変わらざるを得なくなった患者さんに、転居先にできるだけ近い矯正歯科を紹介する「転医システム」があります。

6.抜歯・非抜歯について

①なぜ抜歯しなくてはならないか

 そもそも歯並びが悪い原因を考えると大きな原因の1つとして、歯の大きさと歯が並ぶ容れ物である歯槽骨の大きさのアンバランスが挙げられます。
 歯列が著しく狭い場合、幅を広げることはしますが歯槽骨の大きさは固有のものなので広げるにも限界があります。特に下顎の犬歯を広げて並べることはすべきではなく、上顎歯列の幅も下顎の歯列に調和されるべきだと言われています。
 歯槽骨の大きさを無視して歯を並べるために歯列を広げると、将来的に歯肉が下がりやすい、歯周病が進行しやすい、また歯並び自体が元の形に戻り安定しないなどといったことも起きる可能性があります。

②抜歯・非抜歯は治療の手段の1つであるということ

 歯を抜くか抜かないかは矯正治療の手段の1つであって決して目的ではありません。歯を治療によって歯をどこに移動させどんな咬み合わせをつくるかという目標が予め決められるべきで、目標が決まってこそどんな装置を使うか、歯を並べるスペースはどうやって獲得するか(歯を抜くか抜かないか)といった手段が初めて決められるのです。