1.矯正歯科治療はなぜ必要?|矯正歯科治療について:矯正歯科治療のお話|質の高い矯正治療と安心の提供に努める矯正歯科専門の開業医団体「日本臨床矯正歯科医会」

1.矯正歯科治療はなぜ必要?

歯並びと咬み合わせ

咬み合わせと歯並び咬み合わせと歯並び
 あなたは、奥歯を咬みしめたとき、前歯も横の歯もしっかり咬んでいますか?ファスナーも歯車も、歯がしっかり咬み合って、はじめて持ち前の機能を発揮します。同じように歯は、歯並びのきれいさだけではなく、すべての歯がきちんと咬み合い、あごの動きによく合って、食べ物を噛めなければなりません。一見きれいな歯並びでも、上下の歯がきちんと咬み合っているとは限りません。
 大切なのは、咬み合わせ!「歯並びをよくして、もっときれいになりたい」と、矯正歯科医を訪れる人はたくさんいますが、「咬み合わせをよくしたい」という人は、まだ少数派です。しかし、「きれいな歯並び」とは”よく噛める、正しい咬み合わせ”であることを知ってください。

8020と咬み合わせ

「8020運動」ってご存知ですか?
 「8020運動」とは厚生労働省と日本歯科医師会により推進されている、健康で豊かな生活を送るために欠かせない歯を80歳で20本以上残すことを目標にした運動です。
 20本以上の歯があるとおせんべいやフランスパン、お肉やごぼうなど、たいていのものを噛むことができます。また80歳で20本以上の歯を持つ人は、なんでも好きなものを不自由なく食べることができるので、外で友人と食事をすることもいといません。
 その結果、歯の数が少ない人に比べて社交的であったり、おしゃれであったり、常に機嫌がいいなどの傾向がみられるとの調査もあります。
 歯並びや咬み合わせに不具合があると、食べ物を前歯で咬み切り、奥歯ですりつぶすという歯の大切な機能を十分に果たすことができません。
 さらに、80歳で20本以上の歯が残っている人達を調べてみると、前歯や奥歯がしっかりと咬み合い安定していました。特に8020達成者には、受け口(反対咬合))はいなかったという報告もあります。(出典:日本歯科医師会雑誌 1999;52 茂木悦子ら)
このことから、歯並びや咬み合わせは全身の健康状態と強く関連していると考えられます。つまり、いつまでも健康で元気に生活するためには、咬み合わせは無視できない要因なのです。

矯正歯科治療のメリットとリスク

メリットⅠ
 矯正歯科の目的は、歯並び、咬み合わせの改善にあります。さらに良好な咬合の維持することで患者さんのQOL(Quality Of Life)の向上を目指します。
① 歯科疾患の予防
② あご骨の成長発育障害の予防
③ そしゃく機能の改善と維持
④ 口唇閉鎖不全の改善
⑤ 発音の改善
⑥ 顎関節と咬合との調和
⑦ 体のバランスや運動能力の改善
⑧ 一般歯科治療を行うために必要な歯の移動が可能になる

メリットⅡ
 矯正歯科治療をすると、性格がポジティブに向かう傾向があるとされています。 ともすると、わたしたち矯正歯科医は、歯並びや咬み合わせの改善、さらには副次的なその予防に目を向けますが、矯正歯科を受診する患者さんの多くは外見の改善に大きな価値をおいています。わたしたち矯正歯科医は、患者さんが健康で美しい外見を求めることを後押ししています。
リスク
 矯正歯科治療を始め、継続していくことによって生じるリスクについて、良質な治療を行う矯正歯科医師であれば、患者さんへ必ず事前に説明を行っています。またこれらのリスクが歯の健康に支障をきたさないレベルに留めるような治療を進めていきます。
 もし、矯正歯科医師がこれらのリスクを事前に説明しないで治療をする場合は、逆に注意が必要と言えます。
① う蝕、歯肉炎、歯周炎
 長期的な矯正装置の装着によって、歯の磨き残しから生まれるリスクです。
② 治療期間の延長
 1.成長予測の困難性
 顎骨の成長予測は難しく、成長発育の量や方向およじ時期を常に考慮し治療を行う必要があります。この判断を誤ったり、予想外の成長発育が起こった場合、治療期間が長くなることがあります。
 2.不適切なメカニクス
 歯の移動を行う際、選択される矯正装置の力が適切なものでなければなりません。計画どおりに歯の移動をコントロールできず、結果として治療期間が長くなり、歯に負担(う蝕、歯根吸収)をかけてしまうケースがあります。
 3.患者の協力不足
 定期的な来院、口腔ケア、矯正装置の使用等において患者さんの協力が得られない 場合、治療の中断や延長を余議なくされる場合があります。
③ 歯根吸収の発現
 ある程度の歯根吸収は発現しますが、適正な矯正力による歯根吸収は修復され、最小限に留めることができます。また歯根吸収を引き起こすような矯正力をかけることはできるだけ避けるようにします。
④ 歯肉退縮
 矯正歯科治療に伴い、歯肉の退縮や付着歯肉の喪失を生じることはあります。このような現象は、歯を支えるための歯槽骨がなく、角化した付着歯肉がほとんどない場合に特に頻繁に認められます。歯肉退縮を認める歯については、治療を開始する前に付着歯肉を増大して歯肉を上げるなどの処置を考慮します。