歯科の看板、どう見分ける?|vol.14 知っておきたい矯正歯科の選び方:トレンドウォッチ:本会の活動・ニュース|質の高い矯正治療と安心の提供に努める矯正歯科専門の開業医団体「日本臨床矯正歯科医会」

歯科の看板、どう見分ける?

■診療科目の多さは治療レベルとは無関係
前のページでは、矯正歯科の中身はさまざまであること、選ぶ基準のひとつが認定医や専門医の資格であることなどをお伝えしました。
では、診療の形態からのチェックポイントはないのでしょうか?
最近よく見かけるのが、「○△歯科 矯正歯科 小児歯科」など複数の診療科目が書かれた歯科医院の看板。一見すると、「むし歯の治療も矯正歯科治療も同じところでできるなら便利だし、それだけ幅広い技術力をもっている先生がいる証拠では?」などと捉えがちですが、これもまた一概にそうともいえないようです。
というのも、日本では歯科医師免許があれば、たとえ専門分野の教育や研修の経歴にかかわりなく、その治療を行うことができるからです。極端な話、矯正歯科治療の経験がなくても、歯科の診療科目に矯正歯科と書いてもよいということ。ここからわかるのは、標榜自体は治療のレベルまであらわすものではないということです。
それを頭に入れたうえで、矯正歯科治療も行う一般歯科と、矯正歯科専門医院の違いを見ていきましょう。
■矯正歯科医が常勤する歯科医院がおすすめ
一般歯科とは文字どおり、むし歯や歯周病などの一般歯科治療を手がける診療所を指します。そこで行われる矯正歯科治療は、院長みずからが一般歯科治療をするかたわら行う場合や、決まった日時に大学病院などから矯正歯科医が来て治療する場合などがあります。もちろん、矯正歯科を専門とする歯科医が常駐している一般歯科もありますが、それほど数は多くないのが現実です。
矯正歯科専門医院一方、矯正歯科専門医院とは、専門知識と診療技術を有する歯科医が矯正歯科治療だけを行っている診療所のこと。これらの専門医院には矯正歯科治療に特化している歯科医がいて、一人ひとり異なる咬み合わせの状態に適した治療法を選択できることから、症例数は矯正歯科治療を行う一般歯科医院より10倍ほど多いといわれています。
東京都内で開業する矯正歯科専門医院の院長、三村 博先生は、両者の違いについて次のように話します。

「ひとつには、治療を担当する矯正歯科医が常勤か非常勤かの違いがあります。矯正治療に特化した歯科医院は、基本的に矯正歯科医が常勤しています。つまり、同じ担当医による一貫した治療が受けられるということです。一方、大学病院などから決まった日時にだけ矯正歯科医が来る場合は、治療日数が限られており、治療の途中で担当医が変わったり、緊急時の対応ができなかったりすることもあり得ますね」
また、診療する環境にも違いがあると指摘します。
「常勤の矯正歯科医がいる診療所だと、画像診断ができる撮影機器などの環境や設備が整っていますが、矯正治療を専門としない医院の場合は、矯正用機器など治療に不可欠な設備が十分に整っていないケースもあるのです」
  
■セファログラムを撮影する検査があるかどうか
 三村先生がいう「矯正歯科治療に不可欠な診断機器」の代表的なものが「セファログラム(頭部X線規格写真)撮影装置」です。
セファログラム撮影装置(左)と、撮影された頭部のX線規格写真。
セファログラム撮影装置(左)と、撮影された頭部のX線規格写真。
セファログラムとは、世界中で共通した撮影方法で、顔面と頭部のX線写真の撮影画像から、分析・診断を正しく下すために必要なもの。上下のあごの大きさとそのズレ、あごのかたち、歯の傾斜角度、口もとのバランスなどが、この撮影からわかります。
「この検査をせずに治療を始めることは、たとえるなら海図も見ずに船を出すのと同じこと。我々、矯正歯科医にとって、セファロ分析なくして本格的な矯正科療を開始することは絶対にありません」
三村先生がそう断言するように、矯正歯科専門医院ではセファログラムを治療前・治療後と経時的に撮影することで骨格の成長の方向や量、歯の移動距離などを把握し、客観的な根拠にもとづいた治療につなげているのです。
「治療前には、セファロ分析の結果をまとめたポリゴン表(A)やプロフィログラム(B)といわれるものも見て、診断の一助にしていきます。治療後に、再度これらを分析(C)して、歯がどのように動いたか、顎骨の変化がどうだったかなどを把握したりして治療の評価を行うこともありますよ」
矯正歯科専門医院では、こうした分析結果を直接患者さんに提示しながら、これからどのように治療していくか、また治療によって歯やあごがどのように変化したかを説明していくのだといいます。
歯科医院の数
「分析の結果を患者さんに丁寧に説明するのは、治療法に納得していただきたいからです。例えば、同じ受け口の治療でも、下あごを後方へ動かすのか、上あごを前方に動かすのか、あるいはその両方が必要となるのかは人によって違ってきます。つまり、受け口といっても治療法は同じではないのです」
受け口や出っ歯の治療に使われるヘッドギアやフェイシャルマスクと呼ばれる装置。適した治療を行うために欠かせないのがセファログラムだとすれば、この撮影を検査に用いて、その分析結果を診断に生かしているかどうかが、その歯科医院の矯正歯科治療への”本気度”を見分けるポイントといえそうです。
このほかにも、矯正歯科専門医院では専用機器を用いたさまざまな精密検査と分析を重視しています。くわしくはトレンドウォッチvol.13をご覧ください。

 
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