INTERVIEW-1
学生のときよりも、独身の社会人のときよりも、
自分にとっては結婚した今が治療の好適だったと話すK.Mさん。
矯正歯科治療にかけるその思いとは?
What do you mean?
※1マルチブラケット
=ブラケットやアーチワイヤーなどからなる矯正装置のこと。
※2ヘッドギア
=上あごの成長を抑えたり、骨格的な上顎前突(出っ歯)を改善したり、といった目的で使われる矯正装置。
※3Jフック
=ヘッドギアにJ型の器具をつけたもの。力のかけ方などによって奥歯の動きを
コントロールしたり、前歯の中心(正中線)を合わせたりできる。
■治療前のこと
――治療のきっかけは何ですか?
10代のころから、奥歯がズキズキすることが多くて、歯科医院に相談したところ、「咬み合わせが深くて奥歯に噛む力が強くかかるのが原因」だといわれました。そのとき、はじめて自分が普通の咬み合わせではないことを知りました。
それと、やはり10代のころですが、「笑わないほうが可愛いよね」っていわれたことがあって。以来、笑顔にコンプレックスを感じるようになったことも、矯正歯科治療で治したいと思った理由のひとつです。
――では、ずっと矯正歯科治療をしたいと?
はい。それで20歳のときには矯正歯科の無料カウンセリングを受けました。でも、当時はちょっと踏ん切りがつかなくて。その後、27歳で結婚して精神面でも生活面でも落ち着いたというのもあって、本格的に治療したいと思うようになりました。
――クリニックはどうやって選びましたか?
通いやすい場所にある矯正歯科の専門医がいいと思って、インターネットで候補を絞っていきました。クリニックのホームページもちゃんと見ましたよ。そのうえで、先生の考え方や特徴から咬み合わせの大切さについて書かれていた1軒を選びました。それが今通っている矯正歯科です。初診相談に行ったとき、先生がこちらの質問にきちんと答えてくれるのが好印象で、ここなら間違いない! と思えました。実際、治療をして2年経つ今も不満はありません。
――治療するにあたって周囲の方の反応は?
自分としては咬み合わせにコンプレックスがありましたけど、歯が目立ってガタガタしているわけではなかったので、パッと見ると歯並びが悪いようには思われないんです。なので親からも、親しい友達からも、「する必要ないんじゃない?」なんていわれました。それも、踏ん切りがつきにくかった一因です。ただ、夫は私がずっと悩んでいたのを知っているので、治療については前向きに応援してくれています。
――治療前に不安だったことは何ですか?
矯正歯科の初診を受けるまでは、矯正歯科治療というのが未知の世界だったので、自分の口もとがどんなふうに変わるのかが不安でした。あとは、矯正装置(ブレース)が目立つんじゃないかとか、健康な歯を抜かなきゃいけないんじゃないかとか……、不安はいろいろありましたよ。
――それらを解消したうえで治療を?
はい。治療の流れや抜歯の必要性については、先生からのご説明で理解できました。でも、4本抜歯をした後、私の場合は頬がこけた気がして辛かったですね。でも、抜いた歯の隙間が閉じれば、また見た目も変わると思うので、今はそれを楽しみにしています。
■治療中のこと
――治療に入ってからはいかがでしたか?
今はまったく平気ですが、最初のころは歯が動く痛みを結構感じました。毎月の通院でワイヤーを調整した後の痛みも強くて、通院が憂鬱でしたね。でも、行かないと治療が進まないし、やるしかないと。一方、目立つんじゃないかと気になっていた装置はつけてみると意外に目立たず、それほど気にすることもなかったな、という感じです。
――治療法としてヘッドギアを選択されたのですよね?
はい。先生からアンカースクリューを歯肉に埋め込む方法と、ヘッドギアを使う方法の2つを提案されて、私が選んだのがヘッドギアです。なぜかというと、埋め込んでも取れることがあるとか、痛みが強いとか、ネットでいろいろ書かれていたのを見たのもあって、口腔外科で歯肉にスクリューを埋め込むというのが、すごく怖かったから。
でも、今となってはスクリューのほうが早く進んでよかったかな、なんて思ったりもしますけど(笑)。
一方、ヘッドギアは自分でつけ外しをしなければならないのが面倒ですが、ちゃんとつけないと歯が動かないので、寝る時間を中心に、1日10時間以上はつけていました。今はもうヘッドギアが終わって「Jフック」という装置に変わっています。今でも、つけると違和感はありますけど、それで眠れないというほどではないし、もう慣れました。
――20代ではじめる矯正歯科治療をどう思いますか?
この年代って変化が大きいですよね。私自身、治療中に妊娠、出産を経験しましたし。ただ、治療前からそれは視野に入れていたので、初診相談のときに先生に「治療の中で、どのあたりなら妊娠しても平気なのか」を聞いておきました。そしたら、抜歯の際は麻酔を使うから、避けるに越したことはないけど、それ以外は特に問題ないとのことだったので、抜歯後に妊活を始めたんです。結果、出産・育児と治療を両立できています。
でも、これは個人的な感想ですが、できるなら妊娠と治療は重ならないほうがいいかな。私は妊娠9か月くらいまで通院していたので体が辛かったのと、治療中の歯みがきは時間をかけてするので、つわりのひどいときはきついものがありましたから。もちろん、治療をしたことに後悔はしていませんけどね。
――治療後のプラスの変化はありますか?
まずいえるのが、歯への意識が高くなったことです。以前は、見た目ばかり気にしていたのですが、今はプラークとか肉眼で見えないものについても気を配ってお手入れするようになりました。それと、子どもが生まれて自分が母親になったことで、子どもの歯を大切にしたいという意識が芽生えました。今もちゃんと歯が生えるかを気にしながら、歯が生えたら歯みがきをきちんとしてあげようと思っています。
そして、いちばん大きな変化が、口もとを気にせず、笑えるようになったこと! まだ抜歯の隙間は埋まっていませんが、自分の中では”変わった”という思いがあって、装置をつけていても歯を見せて笑えます。これが最大のプラスの変化です。
――治療後にしてみたいことは?
前歯でものを噛み切りたいですね。私、これまで一度もその経験がないんです。今も食べる時は奥歯しか使っていないので、ぜひ麺類やお肉を前歯で噛んでみたいです。

■主治医からのことば
患者さんとの二人三脚で進むのが矯正歯科治療
治療前にあたっては、いくつかの治療方法をご提案し、Mさんご自身に選んでいただきました。抜歯でも上の歯を2本だけ抜く方法と、上下の歯を計4本抜く方法。2本の場合は前歯のかぶさりすぎは改善できても、奥歯の状態はそのままです。一方、4本抜く場合は全歯の咬み合わせの改善が図れます。ご説明のうえでMさんが選んだのが後者でした。また、アンカースクリューにするかヘッドギアにするかも同様に、メリット・デメリットを提示し、二人三脚で治療を進めています。
治療中の妊娠・出産の際にはペースダウンすることも可能なので、生活の変化がある場合は、Мさんのように早めに主治医に相談していただくのがスムーズな治療の秘訣だと思います。
★次のページでは、40代で治療中のM.Kさんにインタビュー!