パネルディスカッション<大人の治療編>|Vol.19 健康は「咬み合わせ」から ―安心の矯正歯科治療を知ろう―:トレンドウォッチ:本会の活動・ニュース|質の高い矯正治療と安心の提供に努める矯正歯科専門の開業医団体「日本臨床矯正歯科医会」

パネルディスカッション<大人の治療編>


「健康は咬み合わせから ―安心の矯正歯科治療を知ろう―」
ライフステージと矯正歯科治療
榎戸では、大人の場合にはどれくらいの治療期間が必要でしょうか?
茂木平均すると2~3年ですね。大人は体の成長が止まっているので、今の歯並びの中でどうするか、になります。あと、大人の治療で大切なのは、歯を動かした後の「保定(ほてい)」治療の期間です。これは動かした場所で歯を安定させるための大切なもので、大学病院では装置を外してから最低2年間は決まった頻度で通院して、治療後の経過を観察していきます。
高島矯正歯科治療って、何歳まで受けることができるんですか?
稲毛明確にはありません。年齢というより、歯ぐきや歯を支える骨の状態が歯を動かす要件にかなっているか否か重要です。インプラントが入っていても治療できますが、できればインプラントを入れる前に矯正歯科治療をしていただきたいですね。我々のところで咬み合わせの将来像を判断したうえで、インプラントを最適な位置に入れることで、よく噛める歯並びとなります。
高島では、ひとつの医院で完結するのではなく、いろんな先生の力を借りて治療するということでしょうか?
パネルディスカッションレポート稲毛そうです。特に女性は、出産や育児、介護などの負担がかかる場合がありますから、ライフステージの変化によっても治療は変わります。体調の変化なども配慮しながら、その方の生活ペースに合わせた治療を行っていくので、お一人お一人、内容も進み方も違うことになります。
高島私も出産を経験して、咬み合わせの大切さを感じました。産後は治療にも行きづらいと思うので、先生と私生活を共有しながら治療を進めていくというのは、ありがたいですね。
治療後の後戻り
榎戸これまで患者さんの最高齢は何歳でしょうか?
稲毛70歳代の方ですね。下の前歯が年齢とともに重なってきて、食事のときに食べ物が詰まって気になるからと半年間お悩みになった後に矯正歯科にいらして、治療されました。残念ながら、出てしまった歯は並びきらなかったので抜かせていただきましたが、その結果、きれいに歯が並びました。
高島歯は、治療後も少しは動くんですよね。特に私は治療後、保定期間が短かったせいか、じわじわと動いている気がします。ですから、今後もう一度治療しようかなどと考えているのですが、そういう方っているのでしょうか?
茂木はい、なかには再治療を受ける方もいらっしゃいます。歯は長いスパンで見ると、治療しようがしまいが動きます。もちろん、矯正歯科治療で並べた歯が元のようになるということはありませんが、よりよい位置で保つためにも保定期間は大切です。
咬み合わせと歯ぎしり、頭痛の関係
榎戸今日は健康と咬み合わせがテーマですが、高島さんご自身は日常で気になっていることはありますか?
高島実は、出産後、朝起きると首まわりが疲れていることが多いんです。きっと眠りながら歯を噛みしめているのかなと思うのですが、これも矯正歯科治療をすれば治りますか?
パネルディスカッションレポート稲毛確実に治るとはいえませんが、気になるなら矯正歯科に相談されるといいと思います。
高島あともうひとつ、矯正歯科治療をした後、頭痛が起きたりすることはないでしょうか?
稲毛私のところには、これまでそういう患者さんはいらっしゃらないですね。頭痛の原因は複雑で、一概に咬み合わせによるとはいえません。ですから頭痛をしっかり治すには専門外来で診てもらうのがおすすめです。
咬み合わせとPPK(ピンピンコロリ)
榎戸茂木先生は、8020達成者と歯並びの関係を調べておられますが、80歳で20本以上自分の歯がある方は、やはり咬み合わせがいいのでしょうか?
茂木はい。今400人近い達成者を調べていますが、皆さん、安定した咬み合わせをもっておられて、しかも元気です。そのことを、たくさんの方に知っていただきたいですね。最近は、さらに8020達成者の約10年後を調査しておりますが、皆さん、比較的介護期間が短いんです。なぜなら、最後まで自分で食べているから。私たちの最終的な目標は、PPKといっても過言ではありません。今の日本では平均寿命と健康寿命の差が、女性は約12年、男性約9年といわれています。この短縮に、矯正歯科治療が貢献できるのではないかと思っています。
今日からできる、きれいな歯を保つ秘訣
稲毛基本は毎日の歯磨きですね。ただ、歯ブラシだけではどんなに上手に磨いても歯間の汚れは50%程度しか取れないというデータがありますから、デンタルフロスを併用するのがおすすめです。糸ようじ(歯間ブラシ)もいいのですが、サイズに合わないものを使うと歯と歯肉を傷めてしまうので、注意が必要です。今日から実践するなら、まずはフロスですね。
茂木私も稲毛先生と同じですが、歯磨きの仕方を一度、歯科医院でチェックしてもらうというのもいいですよ。磨き残しって、自分ではなかなかわかりませんから。実際、私も衛生士さんにチェックしてもらったら、磨き残しがあったんです(笑)。やはり客観的な目は必要です。
榎戸高島さん、最後に今日の感想をお願いします。
高島目からうろこのお話がたくさん聞けました。私としては、今日のセミナー全体から、子どもの永久歯を健やかに保つためにも、乳歯のときからの意識が大事だと実感しました。私自身もその意識をもって、PPKを目指したいと思います(笑)。

【まとめ】

●矯正歯科治療に年齢の制限はない
●インプラントを埋める前に、矯正歯科治療を受けてほしい
●矯正歯科治療は、一人ひとりのライフステージに合わせて変えることができる
●大人の場合は、特に歯を動かした後の「保定治療」が重要
●矯正歯科治療と頭痛に明確な因果関係はない
●咬み合わせがよいと、自分の歯が長持ちしやすい
●毎日の歯磨きに、糸ようじ(デンタルフロス)を加えるのがおすすめ



いかがでしょうか? 矯正歯科治療は単に見た目を整えるだけではなく、全身の健康に影響する医療行為であることがご理解いただけたのではないでしょうか。
歯の形も、歯並びも、一人ひとり異なります。だからこそ、自分にとってのよい咬み合わせを知るためには、経験豊かな矯正歯科の専門医院を訪ねていただきたいと思います。
そのために、ぜひ、日本臨床矯正歯科医会のホームページをお役立てください。