矯正期間の開始・治療方法(成長期):よくある質問・何でも相談室:矯正歯科治療のお話|質の高い矯正治療と安心の提供に努める矯正歯科専門の開業医団体「日本臨床矯正歯科医会」

矯正期間の開始・治療方法(成長期)

最初に矯正歯科に相談するのは、何歳くらいがよいのですか?

よくある質問と相談室

2.治療の開始時期・治療方法

Q. 最初に矯正歯科に相談するのは、何歳くらいがよいのですか?
A. 気になり始めたときに、気軽に矯正歯科へお越しください。


理想的なのは、あごが成長段階にある発育期

 口の中の状態は一人ひとりちがうため、一概に「開始は何歳から」と断定することはできません。逆にいうと矯正歯科治療はいつからでも始められるのですが、もっとも理想的なのは「あごが成長段階にある幼児期から矯正歯科医が定期的に観察していくこと」です。なぜなら、歯並びや咬み合わせの問題は、歯の土台となるあごの形や大きさと切り離せないからです。

 矯正歯科治療は「早期治療」「本格治療」に分けられます。早期治療とは、乳歯の時期や乳歯と永久歯が混じり合う時期に、あごの成長を見ながら咬み合わせやあごの成長のコントロールなどを行うもの。そして、永久歯が生えそろい、あごの骨の成長がある程度予測できたところで始めるのがマルチブラケット(歯の1本1本にブラケットを貼りつけ、ワイヤーでつないで歯並びを治療する)という矯正装置を使った本格治療です。

まずは、矯正歯科にご相談を

 当会が行った調査によると、早期治療を含め、矯正歯科治療を実際に始めた年齢でもっとも多いのは7〜8歳です。この年代は、ちょうど上下の前歯が生えかわり、将来の歯並びがある程度予測できることと、患者さんである子ども自身に治療に対する自覚が生まれることが理由として挙げられます。

 しかし、あごの骨格に問題のある受け口や開咬(かいこう)、交叉(こうさ)咬合といった不正咬合は、早めに治療したほうがよい場合もあり、ケース・バイ・ケースです。相談したからといって、その診療所で治療しなければならないことはありませんので、矯正歯科にお電話のうえ、お気軽にいらしてください。ちなみに、初診相談は予約制です。料金は全国一律ではありませんが、目安として3,000〜5,000円程度となっています。

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受け口は早めの治療が大切と聞きましたが、なぜですか?

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2.治療の開始時期・治療方法

Q. 受け口は早めの治療が大切と聞きましたが、なぜですか?
A. 成長とともに、治療が難しくなるためです。



 受け口とは、本来上の歯が下の歯より前で咬むべき状態であるのに対して、下の歯の方が前で咬んでいる状況を指します。反対咬合(はんたいこうごう)下顎前突症(かがくぜんとつしょう)などとも呼ばれます。受け口は、成長とともに治療が困難になる場合が多く見られます。また、悪い咬み合わせでものを噛みつづけることで、自分の歯を傷つけてしまい、歯肉がさがり(歯肉退縮/しにくたいしゅく)、歯がぐらぐらになってしまったり、時には歯が欠けてしまうこともあります。これを咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)といいますが、このような状態にならないようにするには、早期の対応が重要です。

 また歯並びが悪いために、正しい位置でまっすぐに噛めず、あごをずらして噛む習慣が、骨格的なあごの歪みへと発展する場合があります。このような歪みは、前後的な場合を反対咬合、横への歪みを偏位咬合(へんいこうごう)といいますが、早期の対応によって未然に防げる場合もあります。

受け口のタイプ

 ところで、受け口には2つのタイプがあります。ひとつは、歯の位置異常による「歯槽性(しそうせい)の受け口」、もうひとつは、本当に下あごの骨が上あごに比べて大きい「骨格性の受け口」です。

 歯の位置異常による受け口とは、上の歯が本来あるべき場所より、内側に生えてきたり、逆に下の歯が本来の位置より外側に生えてきて、上下の咬み合わせが逆になった状態です(前歯の切端が咬む状態は切端咬合といいます)。

 これに対して「骨格性の受け口」とは、上下のあごの成長量や位置がずれている受け口のことです。 下あごの成長は、一般的に身長の伸びと一緒に大きくなり、また、上あごよりも下あごの方が遅れて大きく成長する特徴があります。
 そのため、骨格的な問題を持つ受け口では、成長が止まるのを待って対応する場合もあります。ただし、このような受け口でも、早期から長年の治療計画のもとでの対応が極めて重要になります。矯正歯科専門の医療機関では、このような状況のすべてに対応が可能です。

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子どものときから、矯正歯科治療を始めるメリットとは?

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2.治療の開始時期・治療方法

Q. 子どものときから、矯正歯科治療を始めるメリットとは?
A. あごの成長発育が利用できるのは、子どもの時期だけです。


 矯正歯科治療は大人になってからでも受けることができますが、子どものうちに受けることによって、あごの成長発育を利用できます。

 そもそも歯並びや咬み合わせの悪さは、歯だけではなく、あご(骨格)にも問題がある場合が多いのです。しかし、成長が止まってしまった大人の場合、不正咬合は歯の移動で治すしかありません。そのため、治療効果にも限界があると言わざるを得ないのです。また、大人であきらかに骨格に問題がある場合(例えば 顎変形症など)は、外科手術を併用した矯正歯科治療が必要になってきます。


 一方、発育過程にある子どもの場合、上下のあごの成長を抑制したり、促すなどして治すことができます。要するに、歯並びと骨格の両面から治していくことが可能なわけです。
 そのため、健康な歯の抜歯をせずに不正咬合を治せる可能性も出てきます。また、使用する矯正装置も比較的シンプルなものであること、子どもはむし歯や歯周病などによる治療跡(修復物や補てつ物)が大人に比べて少ないため、矯正装置の装着が容易にできるのもメリットです。さらに、学校や近所にも矯正歯科治療中の子どもも多くなってきているため、疎外感もなく、治療になじむのも早いと思います。

 ただし、子どもの場合、本人のやる気というより親の意向で治療を始めることも多く、矯正歯科治療に前向きではないケースも考えられます。ご家族のサポートで子どものやる気を持続させてあげましょう。

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受験前に矯正歯科治療をはじめるのは、避けたほうがよいですか?

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2.治療の開始時期・治療方法

Q. 受験前に矯正歯科治療をはじめるのは、避けたほうがよいですか?
A. 受験までに半年以上あるなら、治療をスタートしてもよいでしょう。


 矯正歯科治療が受験に直接影響するとは考えづらいと思います。実際、受験中に治療をしている中学・高校生も少なくありません。すでに口の中に矯正装置が装着されていて、矯正歯科治療に慣れているのであれば問題はないでしょう。ただ、口の中の環境が変わり、そのことが少しでも受験に影響すると考えられる場合には、受験時期を避けて治療をスタートさせるのも選択肢のひとつです。

 矯正歯科では、入試が近づくと歯に加える力を弱くするなど、患者さんの負担が極力少なくなるように受験にあわせて治療を調整することもできます。より前向きな対策をとるためにも、矯正歯科治療をはじめる前に将来の進路希望などについてもお話をしていただくとよいでしょう。

 大切なのは、治療に伴うご本人の負担や日常生活での注意点など、正しい情報を得たうえでそれぞれの生活にあわせた治療開始時期を決めることです。

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治療をするうえで、健康な歯を抜くこともあると聞きましたが、それはなぜですか?

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2.治療の開始時期・治療方法

Q. 治療をするうえで、健康な歯を抜くこともあると聞きましたが、それはなぜですか?
A. 抜歯は、歯並びと咬み合わせ、横顔の改善のために行われる場合があります。


 矯正歯科治療における治療方針は、歯を抜かない方法、歯を抜く方法、外科的にあごの位置を変える手術を伴う方法のいずれかが選択されます。全ての矯正歯科医は、出来れば歯を抜かずに、手術をせずに良好な治療を提供したいと考えています。しかし、あごの大きさ、歯の大きさ、上下あごの位置関係、口元は患者さんによって条件が異なります。そのため、それぞれの患者さんに適した治療方針を選択することになります。

 その中で、歯を抜かなければならない条件は主に3つとなります。


(1)歯とあごの大きさのアンバランス
  (歯が大きい、あごが小さいなど)
 ある程度は、あごの大きさを拡大したり、歯列を拡大することで対応しますが、大きさのアンバランスが限度を超える場合には抜歯することで、歯を並べるスペースをつくる必要があります。


(2)咬み合わせのズレ
 著しい骨格のズレは、手術による外科的な改善を必要としますが、多くの症例では歯を抜いたスペースを利用し、咬み合わせのズレを改善します。


(3)横顔(口元が出ている。口が閉じにくいなど)
 口元は、歯の位置に連動します。横から見たときに口元が前に出ている、また、そのために口が閉じにくい場合などは、抜歯により歯を後方へ移動し、口元を改善します。

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矯正装置をつけて金属アレルギーが出ることはありますか?

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2.治療の開始時期・治療方法

Q. 矯正装置をつけて金属アレルギーが出ることはありますか?
A. 矯正装置による金属アレルギーが出ることは非常に稀ですが、
強いアレルギー体質の場合は主治医にご相談ください。


 矯正歯科治療に用いられる金属材料にはアレルギーの原因となりうるニッケルやクロム等が含まれていますが、矯正装置が原因のアレルギー発症の報告は非常に稀です。どうしても心配な場合は、アレルギーを起こしにくいチタンやセラミックだけの材料も開発されています。ただしそのような材料の種類はあまり多くないので、治療内容に制約が出ることがあります。くわしくは、治療先の矯正歯科医にご相談ください。

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永久歯が生え揃うまでに、歯並びのよしあしを見分けるには どうすればよいですか?

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2.治療の開始時期・治療方法

Q. 永久歯が生え揃うまでに、歯並びのよしあしを見分けるにはどうすればよいですか?
A. 年齢に応じて、見極めるポイントがいくつかあります。



 咬み合わせや歯並びの良し悪しを見極める最初のポイントは、集団で受ける1歳半健診3歳児健診です。この時にお子さんの受け口交叉(こうさ)咬合などが指摘されることがあります。ご両親のどちらかが骨格的な反対咬合である場合は、早めに矯正歯科医院で相談を受けることが大切です。また、奥歯の噛み合わせが内側と外側にズレている場合、お子さんに頬づえをつくクセがあったり、寝るときの姿勢が悪かったりする可能性があるため、問診をして原因を探り生活習慣改善のためのアドバイスを行います。

 乳歯列期に歯と歯の間にすき間がたくさんある場合、すきっ歯ではないかと心配するお母さんも時々いらっしゃいますが、乳犬歯から前の歯は、サイズの大きな永久歯が生えてくるため、すき間があったほうがよいのです。逆に、乳歯列期のときから歯と歯がすき間なく並んでいる場合には、残念ながら永久歯に生えかわった段階で、きれいに並ぶ場所が足りなくなるので、凸凹のある歯並びになってしまうのです。


 いずれにしても、生えかわり期は歯列やあごの成長発育が活発なため、ご両親は子どもの歯や口の中にできるだけ関心をもって、正常な発育を妨げる因子に早く気づいてあげることが大切です。小学生であれば、具体的に次のようなポイントをチェックしておくとよいでしょう。

よい咬み合わせのチェックポイント(小学生の場合)

  • ☑ 6歳臼歯(第1大臼歯)が正常に生えてきたかどうか
  • ☑ 上の2本の前歯の間にいつまでもすき間が残ってないか
  • ☑ 乳歯の前歯がいつまでも抜けずに残っていないか
  • ☑ 側切歯(前から2番目の永久歯)の生えてくる場所がなく、歯列からはみ出すように生えていないか
  • ☑ 前歯の咬み合わせが上下で反対(受け口)になっていないか
  • ☑ 指しゃぶりや舌を突き出すクセがないか
  • ☑ 奥歯を咬み合わせたとき、左右の奥歯が内側・外側にズレていないか
  • ☑ 上の前歯と下の前歯の間に下の唇が入り込んでしまうような前後差はないか
  • ☑ 奥歯を咬み合わせたとき、上下の前歯の間に大きく隙間は空いていないか
  •  (※=生える途中の歯をのぞく)

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口唇(こうしん)・口蓋裂(こうがいれつ)の矯正歯科治療は いつから始めるのがよいですか?

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2.治療の開始時期・治療方法

Q. 口唇(こうしん)・口蓋裂(こうがいれつ)の矯正歯科治療は
いつから始めるのがよいですか?
A. 治療開始時期などはケース・バイ・ケースです。


 口唇・口蓋裂(唇顎口蓋裂/しんがくこうがいれつ)がある場合、上あごの発育がよくなかったり、裂があった影響で歯の生え方に異常があることが多くあります。そこで、咬み合わせをよくしたり顔のバランスを整えたりするために、矯正歯科治療が必要になってきます。矯正歯科治療を始める時期は、患者さんの状態や発育の程度、医師の考え方などによって異なりますが、一般的には以下のように分けられます。

 口唇・口蓋裂の矯正治療は健康保険が適用されますし、育成医療によって自己負担金が一定額以上、免除される制度もあります。治療を開始する前に専門開業医とよく相談してみましょう。

乳歯列期

 赤ちゃんのときに、割れているくちびるや上あごをふさぐ手術をします。そして生後2〜3カ月でくちびるの手術を、言葉を話し始める1歳〜1歳半くらいの間にあごの手術をすることが多いのですが、最近は技術も進歩し、くちびるとあごを同時に手術できる施設も増えてきました。

 必要な場合は、永久歯が生える前に、欠けている部分に骨を移植して歯の生えかわりを助けたり、歯を動かすための土台づくりを行います。

混合歯列期

 前歯が永久歯に生えかわったら、咬み合わせや歯並びを整える矯正歯科治療に入ります。また、将来行う歯やあごの裂部を骨移植するための準備も、この時期に始めます。

永久歯列期

 永久歯が生えそろってくると、最終的な咬み合わせを目標に、マルチブラケットを用いた本格治療が行われます。程度の軽い患者さんの場合は、永久歯が生えそろってからの矯正歯科治療で済むこともあります。

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拡大床による矯正歯科治療を長期間続けていますが、このままで大丈夫でしょうか?

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2.治療の開始時期・治療方法(拡大床について)

Q. 拡大床による矯正歯科治療を長期間続けていますが、このままで大丈夫でしょうか?
A. 拡大床の長期間の使用につきましては、トラブルが報告されていますので、まずは担当医にご相談ください。

拡大床による歯の移動様式は、主に歯の傾斜により起こりますので、適用症例は限られます。小児期の矯正歯科治療に使用されることがある拡大床装置ですが、長期間の使用につきましてはトラブルが報告されており、矯正歯科専門の開業医団体である当会では以下のような見解やご報告をホームページ上にまとめてありますので参考にしてください。

「拡大床使用に関しての本会の見解」

「拡大床を使った矯正歯科治療の危険とトラブル」

しかしながら、このような見解は、拡大床の使用そのものを否定するものではありません。経験豊富な矯正歯科医が、適切な検査診断のもとに中長期的な治療計画を立案し、その一部として拡大床を適切に使用することはあります。

今回、医療機関が拡大床の適用症例であると診断し、治療を継続している場合は、事前に十分な精査・診断を行い、最終的な治療のゴールを設定しております。まずは担当医に再度、全体の治療計画、拡大床の使用期間と使用目標などについて詳しく説明していただいてはいかがでしょうか。その際、現在の治療に対する疑問点や不安、今後の治療に対するご希望につきましても、ご相談してみてはいかがでしょうか。不安や心配を取り除くような見通しをご説明いただけるものと思います。

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